第556話 シレット・コンクリフト

「今回侵攻してきた兵器は魔神族とは別の勢力だった……もしかするとスターが探っているこの戦争の裏というのもそいつらなのかもしれないわね」


これまでに見せた事の無い難しい顔でそう告げるコンスタリオ、その口調は疑問を呈しているようにも見える。だがその内心ではどこかでこれは疑問ではなく、既にそう確信させる何かがあった。


「確かに……今回の魔神族の行動を見る限り、奴等があの兵器を投入していたとは思えません。ですが……」


コンスタリオの疑問に対し、何かを言いかけるシレット、だが其れを聞いたコンスタリオは


「シレット、貴方もそう思っているんじゃない?今回の魔神の行動を見て。いえ、もっと言ってしまえば今回の戦闘で貴方は……」


コンスタリオは気付いていた、先程からシレットが何処か不服そうな表情を浮かべていた事を、其れを見抜かれたと思ったのかシレットは


「……やはり、隊長に隠し事は出来ませんね……」


と観念した様子を見せる。


「シレット、やっぱりお前もそう思っていたのか?」


モイスが何か心当たりがある様子の口調を投げかけるとシレットは


「ええ、今回の戦闘中、私が兵器に隙を見せた時、魔神族は私ではなく兵器を狙って攻撃した。それも一度ならず二度までも……

あれは明らかに私を……でも、何処かでそう考えたくない自分が居るの」


と口にする。シレットがその現実を受け入れがたいのも無理はない。シレットにとって魔神族が絶対的な敵であるという認識は内心を少なからず支える柱であり、其れを認めてしまう事はその柱に自ら亀裂を入れる事になるからだ。


「そうでしょうね……私も今の状況だけだったらきっとシレットと同じ思いを持っていたもの。スターからの情報が無ければ……」


シレットの心中を察し、自分も同じ事を考えていただろうと思いをはせるコンスタリオ、故にシレットに対し激励も叱責もする事は無い。


「だけど……私を助けて魔神族に何の得があるというの……私ごと兵器を討つ方が簡単な上に効率もいい筈なのに……」


内心に葛藤を抱えながら必死に言葉を発するコンスタリオ、その言葉には少なからず自虐的な意味合いも感じられる。だがそれを聞いたモイスは


「確かにそういわれればそうだな……もしかしてそれも何か狙いがあるのか?」


と空気を読んでいるのか読めていないのか分からない発言をする。


「もし狙いがあるとして、それは一体何なの……それを確かめる為にも今は進むしかないのでしょうけど」


苦悩と葛藤を抱えながらもそう発言したシレット、それは今の彼女に出せる精一杯の答えであった。

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