第552話 もう一人の功績者

「お疲れ様岬、無事に兵器の侵攻を食い止められたみたいだね」


天之御から労いの言葉を掛けられた岬は何処か遠慮がちな視線を浮かべつつも


「いえ、私が自ら志願した事ですから、やり遂げるのは当然です」


と背筋を伸ばし、襟元を糺す。


「今回の侵攻、恐らくはブントの中央が糸を引いているのでしょうね。そして更に言ってしまえばこの侵攻を私達側のせいにして戦意を煽り、同時に協力者を一掃するのが狙い。星峰の予測、恐らくは当たっているんでしょうね」

「ええ、でもコンスタリオ小隊が迎撃に来てくれたのは幸いだったわ。そこでこちらも又独自に兵器と戦う事で少なくともこれが魔神族の侵攻でない事は印象付けられる。後はコンスタリオ小隊がどう出てくれるかだけど」


真剣な顔つきで空弧が星峰にそう話しかけると星峰もそれに応対する。その顔は真剣な、しかし一方で何処か安堵もしている、そういう表情であった。


「その為に以前俺達が足を踏み入れたあの火山は都合が良かったって訳か。以前足を踏み入れた時に何か細工を加えていた、そう印象付けて誘導するのは容易だろうからな」

「でも、そんな事はさせない。私の故郷を、そんなエゴに使わせてたまるもんか!!」


八咫の言葉に続ける様に先程とは打って変わって強気な言葉を出す岬、そんな彼女に対し星峰は


「だから岬の志願を聴いて、向かってもらったんでしょ。迎撃は上手く行ったんだからそういきり立たないで」


と諭すような、宥める様な言葉をかけて少し落ち着かせる。


「そうだったわね……つい冷静さを欠いたわ」

「まあ、故郷の事でっていう気持ちは分からなくも無いけどね」


冷静さを欠いた事を反省する岬に対し、星峰はそれを責めたりはせず、ある程度肯定的に捉えている事を告げる。星峰も又故郷を失っている為、岬を責めたりしないのはその点もあるのだろう。


「で、今回侵攻してきた兵器だけど、溶岩の中に設置されていた転移魔術の印を逆探知してみたらその出所が特定出来たよ」


天之御がそう告げると先程まで少し緩んだ顔を見せていた岬、星峰も天之御の方へと顔を向け、その表情も真剣な物に変わる。其れを確認した天之御は


「今回の兵器が出現して来たのはワンカーポの地下、以前調査した人工生命が作られていた施設の何処かであるのは間違いない。それ以上の事は此方側のデータ不足で絞り込めていないけどね……」


と逆探知先の情報を告げる。それを聴いた星峰は


「となると、一番可能性が高いのは前回調査を断念した兵器開発エリアね。それ以外の場所であればある程度のデータは揃っているもの」


と仮説を立て、他の面々もそれに同意する。

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