第549話 新たな同志

「そうなの……それは確かに良かったわね」


指揮官の報告に胸を撫で下ろしているように見えるコンスタリオ、だがその言葉のトーンには明らかに違和感が感じられた。それを見逃さなかったのか指揮官は


「?どうかなさったのですか、何処か浮かない様ですが……」


とコンスタリオに問いかける。するとコンスタリオは


「ええ、実は……」


と指揮官に山頂に向かう途中で起こった出来事を全て話す。それを全て聴き終えると指揮官は


「火口途中に魔神族部隊が……しかし、そうなるとあの兵器を率いていたのは一体……」


と顔を顰め、首を捻り出す。その様子を見て


「と言う事はやはり、貴方もあの兵器は魔神族が送り込んできた物と解釈していたんですね」


とシレットが問いかける。すると指揮官は


「ええ、それ以外考えられないと思っていました。ですがだとするとあの兵器を送り込んできているのは一体……」


と先程までのこれ幸いと言う顔とは異なる、明らかに不安と疑問が混ざった顔を浮かべる。するとコンスタリオは


「まだ断定は出来ませんが、あの兵器を破壊した後に出現する黒い靄と関係があるのかもしれません」


と告げる。


「兵器を破壊した後の黒い靄?確かに破壊した兵器からは何かが出現していましたが、其れと兵器の侵攻に何の関係があるのです?」


コンスタリオの発言に対し当然ともいえる疑問をぶつける指揮官、其れも致し方ない話ではある。常識的に考えれば破壊した後の兵器から漏れている物が進行と関係している等考えられない。だがコンスタリオは敢えてそれを口にし、更に


「今回の侵攻では聞こえませんでしたが、これまで私達はあの兵器と交戦した際、あの兵器から許さないと言う声を幾度となく聞いていたんです。それも空耳や機械越しのくぐもった声ではなく、明確な言語として発された声を」


と兵器に対する疑問を指揮官に話す。其れを聞いた指揮官は


「つまり、その声の発生源となっている存在がどこかにあり、それが今回の侵攻を支持しているという訳でしょうか?俄かには信じがたい話ですが……魔神族の差し金でないとするならばあらゆる可能性を検討した方が良いでしょうね」


と告げる。その言葉を聴いたモイスが


「って事はつまり……」


と何かを確認する様な口調で話すと指揮官は


「ええ、皆さんの仮説を信じます。今後あらゆる可能性を検討し、帰還して調査してみます。今回は侵攻を防ぐ事が出来ましたがもし黒幕が居るのだとすれば場合によっては魔神族以上の脅威となる事も考えられますからね」


とコンスタリオ小隊への協力を約束する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る