第548話 広がる疑念、広まる疑問

「結局何だったのよ、あれ!!」


荒々しい声を上げるシレット、どうやらまだご立腹の様である。


「はっきりとした答えは出せないわね……ただ、今回の兵器が少なくとも魔神族の差し金では無いと言う事は確実だと思うわ」


怒りを露にしているシレットに対し現状を告げるコンsヌタリオ、それはまず現状に目を向けるべきであるという無言のメッセージでもあった。だがコンスタリオ自身もその内心で


「とは言ってみたものの、私自身も腑に落ちない部分はあるわね……さっきの説明も、正確に言えば魔神族ではなく、魔王の差し金ではないというべきなのかもしれない……」


と自身の考えに迷いを感じていた。


「で、如何する?魔神族が帰還し、兵器も破壊した以上ここに留まる理由はあるのか?何か調べるっていうなら調べるけどよ」


モイスがぶっきらぼうな口調で告げる。その口調からシレットと同様、魔神族の行動に苛立ちを少なからず感じている様だ。


「そうね、戻りましょう。兵器の出現元が溶岩の中である以上私達に調べる術はない訳だし、此れ以上留まっていても意味はないわね。それに、この靄が醸し出している嫌な空気から早く離れたいわ」


コンスタリオの言う通り、ここに来るまでに破壊してきた兵器は何れも破壊した後に例の黒い靄を出していた。その正体が何であるのかはコンスタリオ小隊は知らない、ただ、漠然としてはいるものの何となく嫌な感じはしている、そんな印象であった。

だが元来た道を戻る途中、コンスタリオ小隊は破壊した兵器から靄が出現していない事を目撃する。


「靄が出現していない……内部の貯えが尽きたのでしょうか?」


其れを疑問に思ったシレットがそう呟くとコンスタリオは


「そうかもしれないわね、とにかく、あの嫌な空気は感じずに済んでいる、それが一番だわ」


と告げ、せっせとその場を後にする。だがその内心では


「或いは魔神族が黒い靄を消した?だとしたらあの黒い靄は魔神族にとって利用価値がある、あるいは都合が悪い何かと言う事なの?可能性として高いのは後者の方ね……?どうして私はそう思ったの?」


と靄と魔神族に対する更なる疑問を抱く事になる。

火山の麓まで降りるとそこでは防衛部隊指揮官がコンスタリオ小隊の帰還を待っていた。


「皆さん、ご無事で何よりです」


帰還したコンスタリオ小隊に指揮官がそう告げるとモイスは


「そっちも無事なのか?部隊の被害は……」


と防衛部隊の状態を聞き返す。それに対し指揮官は


「負傷者はある程度は出ましたが、幸いにも死者は出ていません。又、市街地への侵攻も阻止出来ました」


とこれ幸いと言った表情で語る。

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