第535話 芽生えた疑念故の

「で、どうするんです?又前回みたいに司令に話をつけるんですか?」


シレットがそうコンスタリオに問いかける。この問いかけが意味するものを察したのかコンスタリオは


「いいえ、私達には独自の行動を取る権限は与えられている。それは此処に派遣される際に取り決めた契約よ。前回は事が大きくなりそうだったから伝えたけど、今回は行動の規模から考えても伝える必要は無いと思うわ」


と返答する。そしてすぐさま飛空艇に向かっていくがその時モイスは見逃していなかった。シレットがコンスタリオの返答を聞いてそっと胸を撫で下ろしているのとコンスタリオが少し複雑な表情を浮かべているのを。

三人が飛空艇で移動する途中、ふとモイスは


「なあ、本当に司令に話を付けなくて良かったのか?もし万が一こうしている最中に司令官が何か話を持ち込んで来たら……」


とコンスタリオに話しかける。勿論シレットには伝わらない様な小声での耳打ちだ。その耳打ちにコンスタリオは


「確かに、本来は望ましい事ではないという自覚はあるわ。だけどシレットが態々あんな事を聞いてきたと言う事は……」

「分かってる。司令官が信用出来ないって事だろ」


コンスタリオに問いかけたモイスだが、シレットが内心に抱いている疑念も承知はしていた。何故ならモイスも、更に言ってしまえばコンスタリオも同じ疑念を抱えていたからだ。


「前回の作戦時、司令は明らかに難色を示し、いざその作戦開始のタイミングになって魔神族が襲撃してきた。単なる偶然と言ってしまえばそれまでではある。けど……」

「そうは思えない……って事だろ」


モイスも又、シレットやコンスタリオが何を言いたいかは分かっていた。更に言えばコンスタリオは


「それに、もしあの司令官が何かを隠しているのだとしたらもしかしたらアンナースも……そしてそれはスターが言っているこの戦乱の裏と何か関係があるの?」


と言う別の疑念も既に抱きつつあった。

そんなこんなで話をしている内に一同を乗せた飛空艇は目的地であるアルファタウンへと到着する。そこはタウンと呼ばれてはいるものの、やはりその規模は小さく、必要最低限の設備や建物だけで構成された、有り体に言ってしまえば残り物をかき集めて作った様なタウンであった。


「小さくて質素なタウンですね。これじゃ魔神族が攻めてきたら一瞬で陥落しそうです」


飛空艇から見えるタウンの風景に歯に衣着せぬとも失礼とも言える発言をするシレット、だがコンスタリオとモイスも口にこそ出さないものの同じ様な印象を抱いていた。

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