第524話 集う悪意

扉を開け、進んだその奥には兵器の生産ラインと思われるベルトコンベアを中心とした機械空間が広がっていた。だがベルトコンベアも製造ラインも止まっており、兵器が製造されている雰囲気ではない。


「ここは生産ライン……止まってはいるみたいですが……」


空弧が少し不安げな声を挙げる。だがそれもある意味必然ではあった。中は例の黒い靄で覆われ、室内だというのに夜の森の中の様に視界が悪い、又靄の色も今までより明らかに濃く、不気味さ、気味の悪さ、いやそれ以上の何とも言い表せられないものが渦巻いていた。


「何なのこれ……これまでの靄とは明らかに違う異質な雰囲気が漂っている……」


星峰がそう呟くと一同は目の前に大掛かりな機械があるのを見つける。


「目の前に機械か……しかし……」


八咫が警戒心を持った口調で話す。それも当然の事ではあった。目の前にある機械すら見つけられない程に靄の濃度が濃い、その事実は一同の警戒心を高めるには十分すぎる判断材料であるからである。そんな中でも星峰は機械にそっと近付き、調べようとする。


「星峰、気を付けて。何だか嫌な予感がするの」


空弧がそう告げるとその予感が的中したかのように周囲の靄がその機械に集まり出す。それにより周囲の視界は徐々に晴れてくるが逆にその機械に集まった靄は濃度を増し、その姿を視界に捉える事すら出来なくなっていく。


「何!?何が起こっているの!?」


岬が困惑した声を挙げるとその機械を包んだ靄は徐々にその姿を変えつつ巨大化していき、全身を武器で固めた兵器……いや要塞の様な姿へと変貌する。


「な、何なのよ此れ!!」

「靄が集まって異形の兵器へと変貌したっていうの!?」


想像を絶する事が目の前で起こっているのを見せられ、一同は困惑を隠せない。その全身に装備された火器の銃口を一行に向け、その兵器、いや要塞は火器を乱射してくる。


「魔王妖術、紺碧の守護!!」


天之御はそういうと自分達の前に緑色の壁を出現させ、自分達に向かって放たれた火器を防ぐ。だが乱射された火器は一行だけでなく周囲の壁や機械と言った建物そのものも攻撃し、瞬く間に建物を崩壊させる。


「くっ、此れじゃあの時と……」


要塞の攻撃で建物が崩壊し、降り注ぐ瓦礫もは防ぐ。そして瓦礫が降り終わり、崩壊した建物の跡地には天之御達と完全に無傷の要塞が対峙していた。


「機会に集中した靄がこんな物に変貌するなんて……放置は出来ない!!何としてもここで食い止めるよ!!」


天之御はそういうと壁を消し、一行に臨戦態勢を取る様に指示する。

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