第510話 内なる亀裂

シレット、モイスとの会話の後もコンスタリオは一人で松波街の画像を調べ、少しでもスターに近づける手掛かりがある事を期待していた。だがその期待はそう易々と満たされる程甘い物ではない。ほんの少し調べただけで近づける程容易なものではなかった。


「……もし、松波街の防衛部隊とあの魔神族が仮に心から通じ合って共闘したのだとすれば、松波街の防衛部隊は私達にとって……いえ、松波街の防衛部隊はあくまで魔神族と戦っていた……駄目!!考えれば考える程……」


独り言を呟き続けるコンスタリオだがその言葉は苦悩と疑念に満ち溢れていた。それも無理はないのだが、それに対する手掛かりがないという状況が更に彼女を悩ませる。


「駄目ね、此れ以上考えても……今日はもう止めにしましょう」


そういうとコンスタリオは目の前の機器の主電源を落とし、そのまま床についてその瞼を閉じる。苦悩の疲れが出たのか、その瞼を閉じた後コンスタリオは夢すら経由せずに深い眠りへと落ちていった。

その頃、基地の指令室ではアンナースが明らかに不機嫌な顔を見せ、司令と会話をしていた。


「全く……本部の部隊を動かしてこの様とはね……」

「ええ、此れでは一体何の為に今まで本部の事を極秘にしてきたのか……」


アンナースと向き合う司令も又不機嫌な顔を見せていた。この様子からどうやら先程の交戦の事について話しているのは明白であった。


「本部だからって勝手な事してさ。それでいてその失態が伝わらない様に何とか誤魔化しておけって、簡単に言ってくれるわよね。

全く持って本部の世間知らずの連中には呆れるわ」


明らかに不機嫌を隠さないアンナースの罵詈雑言ともとれる発言は徐々にヒートアップしていく。それに乗っかるような形で司令も同調していき、徐々にアンナースと司令の会話は刺々しい物が見えてくる。


「コンスタリオ小隊を取り込む計画には本部も賛成しているのに、今回の事がばれたらどうするつもりなんでしょうね?

彼等は大人しくしててくれる程従順な存在ではないというのに」

「ええ、こうしている間にも私達の事を調べられているかもしれない。先日の一件で彼女達に私達の一面がばれた事は確実なんだから。下手をするとそこから全てが瓦解しかねない」


先日のとは恐らく奪還作戦の事を指しているのだろう。それを聞いた瞬間に司令の顔も暗くなる。


「ええ、ただ、今回の一件で本部とは痛み分けの関係に持ち込む事が出来ました。その点だけは……幸いとも言えませんね」


その暗さを払拭しようとしたのだろうが、却ってそれを助長する結果となる発言を司令はする。

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