第503話 次々と出る疑念
「これだけの疑念が出れば彼等は黙って指を加えてみている様な事は無いわ。間違いなく何らかの行動を起こそうとする。そしてその場合最も考えられる線がこれだったという訳よ」
少し負い目を感じる声で淡々と語る星峰、その負い目は信頼の裏返しでもある。
「つまり、私に松波街の防衛部隊に協力する様に頼んできたのはその画像記録の線も含めてという訳だったのね」
「ええ、利用している様で不愉快なら謝罪するわ」
確認するように言葉を続ける空弧に対し少し申し訳なさそうな顔を浮かべる星峰、だが空弧は星峰を責める様な事はせず
「いいえ、寧ろいい体験が出来たわ。人族と共に肩を並べられるなんて中々出来ない事だもの」
とその状況を肯定的に捉える。
「そう?そう言ってくれると嬉しいわ。そして彼等が抱いた疑念はそう簡単に消し去れるものではない筈。これで安易にブントに併合する事は避けられるでしょうね」
空弧の言葉に少し安堵したのか、星峰の声に何時もの冷静さが戻る。そんな星峰を見て空弧も安堵したのか、その顔が少し緩み、笑顔を見せる。
「それにしても、どうしてあの街に先史遺産の技術が集中して配置されているのかしら?あれだけ一点に集めていたら疑念を抱かれるのは必至でしょうに……」
ここにきて空弧が今回の一件の対象となった街に疑念を抱く。すると星峰は
「あの街は開戦して間もなく魔神族の制圧下に置かれ、その後ずっと魔神族側のエリアとして使われていた。恐らくはその間に何らかの形で先史遺産が運び込まれたんでしょうね。そしてそうだとするなら」
と何かを確信したような発言をし、それに空弧も黙って同意する。
「だとすると、人族側になったとしても施設が残っている限り、それが禄でも無い形で使われる可能性は否定出来ないわね。彼等が調査を早くしてくれるといいんだけど」
「促してはみるつもりよ。とはいうものの、今回の一件で私への疑念も少なからず芽生えた可能性がある以上、順調に行くとは限らないけど」
空弧が口にした懸念に対し星峰は更なる働きかけをする事を告げる。それに対し空弧は黙って笑顔を見せる。それは同意と安心の合図でもあった。
「さて、それはそうとこちらも先史遺産については話を進める必要があるわね。今回の一件で先史遺産が既に悪用されているのが決定的になった以上、あまり長く野放しには出来ないもの」
空弧がそう告げると星峰も
「ええ、恐らく近い内に動く事になるでしょうね。それも今回は徹底的に」
と言い、先史遺産に対して近々動きがある事を予感させる。
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