第497話 影の立役者

「今回の一件で彼等にあの事を知られてしまったのでしょうか……そして万が一、その疑念を追及されたら……」

「彼等を此方側に取り込む作戦は空中分解、下手をすれば私達の首も飛ぶわね」


不安げな声を上げる司令官と縁起でもない事を口にするアンナース、だがその口調はそれが冗談ではなく、起こり得る事である事を物語る重さがあった。そしてその顔にも余裕や笑顔は見られない。余程の事を話しているのだろう。


「それにしても……松波街が出しゃばってくるなんて……一体どうしてこんなタイミングで……」

「恐らく偶然ではなく、奴等が手を回してくれたのでしょうね!!」


司令官の心配交じりの疑念に怒りの声を挙げるアンナース、その怒りの声の対象と思われる存在、天之御も又同志を集めて会話をしていた。その視線の先に居るのは空弧だ。その顔は何処か晴れやかであり、人仕事を終えた方の様な雰囲気を漂わせている。


「お疲れ様、空弧。君の活躍、しかと見届けさせてもらったよ」

「いえ、今回の立役者は作戦を立案してくれた星峰と実行してくれた彼等です。私は只、その傍に並んでいただけです」


天之御の言葉に対し、謙虚な返答をする空弧、その会話内容では何について話しているのかを推測する事は出来ない。だがその直後今回はその場に居る豊雲が


「しかし、此処までストレートに上手く行くとは……星峰が彼等を評価していると言うのも納得です」


そう発言した事で先程までの作戦の事を話している事ははっきりした。だが豊雲の言葉を聞いた星峰は何処か不機嫌そうな顔を浮かべる。


「豊雲、星峰が彼等に対して抱いているのは評価ではなく信頼だよ」


星峰の顔を見てその心境を察したのか、天之御は豊雲に対し諭す様な発言をする。

その言葉に事態を察したのか、豊雲は慌てて


「そうでしたね、今のは礼を失した発言でした」


と前言を撤回する。


「まあ、それは良いけど……これでコンスタリオ小隊がブントに対する疑問を持ってくれたかどうか、そこはまだ運次第ね」


豊雲の発言を若干引き摺っているのか、少々不機嫌な声で反応する星峰、だがその声は直ぐに何時もの調子に戻る。


「それにしても、コンスタリオ小隊にあの街の奪還作戦を促して、裏で密かにそれをサポートする今回の作戦、これでブント側にも少なからず打撃は与えられたわね」


岬がそう言うと八咫も


「ああ、魔神族側ではある物の戦力を削り、更にその責任と言う形で司令官を更迭する事も出来た。これでブントは益々動きを取り辛くなるだろう」


と岬の発言に同意する。

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