第483話 戦場の仏
「はい……分かっています。ですから……」
そう返す司令官の言葉は何処か歯切れが悪い。明らかにアンナースの顔色を窺っているのが見て取れる。もしこの場にコンスタリオ小隊が居たら確実にその理由を問われているだろう、そう思わずには居られない程の顔色の窺い様であった。
「まあ、彼等を引き入れるとなるとそれなりのリスクは付き物でしょう。それよりも、彼等がどの筋からその情報を仕入れたのか、その点が不可解だわ。もし魔神族側に何か動きがあったら……」
そう話すアンナースの顔は普段のあどけない笑顔ではない。どこか冷淡で、他方警戒心を抱いている様に見える険しい顔であった。
「分かっています。直ぐに調査を致します。ですがもし、何らかの方法で外部から入手したとしたら……」
「それはそれで特定は出来るわね。外部からの情報でそこまでの物を送信出来る存在等、早々居る者じゃないわ」
アンナースの顔を見て警戒心を更に強める司令官、一方アンナースもそれを見てか更に顔を険しくする。
翌日、コンスタリオが司令官に頼み、手配したマルセールタウン侵攻部隊の出撃準備が整う。
「マルセールタウンに一体何があるというんです?幾らスターの情報でも詳細が不明すぎませんか?」
飛空艇に乗船した後、シレットはコンスタリオにそう問いかける。それを聞いてコンスタリオは
「確かにそうかもしれないけど、今ここでじっとしていても仕方ないわ。それよりも今は出来る事をするべきよ」
と諭す。それを聞きシレットは
「まあ、それはそうですけど……」
と引き下がるものの、納得していないというのはその声の低さからも聴いて取れた。そしていざ出陣となったその時、拠点内に警報が鳴り始める。
「何!?このタイミングで警報って……」
シレットが思わず声を上げると基地内に
「先程魔神族の部隊が此方に対して進行しているとの情報が入った。目的地は不明だが規模から見て恐らく侵攻部隊と思われる」
そう告げる通信が流れる。それを聞いたコンスタリオは
「くっ、このタイミングで……仕方ない、ここは……」
と部隊を迎撃に向かわせようとするがその時別の通信が入って来る。モイスがそれに応対し通信機の電源を入れると
「防衛部隊の皆さん、お久し振りです!!」
と言う声と共に松波街の防衛部隊指揮官の声が聞こえてくる。
「その声、松波街の?」
モイスがそう問いかけるとその相手は
「はい、皆さん、現在進行中の魔神族は我々が迎撃します。皆さんはそのまま元の行動を行って下さい」
と告げる。
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