第437話 最悪の再会

その写真を見ながらその人族は更に


「ねえ、スター君……いえ、今は違ったわね……彼女達を何時まで誤魔化し続ければいいの?」


と意味深な呟きをする。その視線は何処か哀しく、寂しげな様にも見える。一方、そのスター、いや星峰は何処かの施設に居た。


「う……ここは……」


そう言って目を開けるとその目には幾つもの見た事の無い機会が目に飛び込んできた。そして両手両足を拘束されている。その状況から自分が捕らわれてしまったのは容易に想像出来た。


「くっ……そうか、私は……」


意識を失った事を思い出し、その前後の事を思い出そうとする星峰、だがそれを邪魔するかのように


「漸くのお目覚めか。まあ、眠り姫の時間にしては短い方かな?」


と言う聞き覚えのある声と共に何者かの足音が入ってくる。その足音は徐々に大きくなり、迫ってくるのが容易に想像出来た。そして星峰の前に現れたその存在を見て


「お、お前は……」


と驚愕の声を上げる星峰、その存在とは以前八米街で遭遇した空弧の兄であった。


「ふふ、兄の顔を覚えていない様な素振りをこの前は見せてくれたけど、流石に今回は覚えていてくれたようだね」


空弧の兄はそういうと得意気な顔を星峰に向ける。その顔に嫌悪感を抱く星峰、だが両手両足を拘束され、武器の剣も手元にない以上抵抗する術がない。


「ふふ、そんな険しい顔をしなくても、一応家族なんだからさ」


飄々とした物言いに嫌悪感を抱く星峰


「貴女みたいな奴を家族にもった覚えはないわ!!」


そう強く反論する。だがそう聞いても空弧の兄は


「ふふ、確かに君は一度縁を切られた身だからね。だけど大丈夫、君には戻ってきてもらうつもりでここに来てもらったんだから」


と飄々とした態度を崩さない。


「戻ってきてもらう?どういうことなの!?」


星峰がそう強く問いかけると空弧の兄は


「簡単な事さ。僕達の所属する組織にとってあの魔王がそろそろ厄介な存在になってきたからね。君に暗殺してもらって、その上で戻ってきてもらうのさ。そうすれば君も家族に戻れる」


と発言する。


「組織っていうのはブントの事なの?」


星峰がそう問い質すと空弧の兄は


「おや、名前を知っていたとは話が速いね。その通りだよ、この所あの頓珍漢な魔王のせいで此方の被害が大きくなっているからね。そろそろ表舞台からご退場願おうって訳さ」


と言う。


「私がそれに協力するとでも?」


星峰が尚も強く反論すると空弧の兄は


「おやおや、家族に戻りたくないのかい?」


と返してくる。

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