第415話 悪夢に塗れる現世
建物の入り口に着くとそこは周囲の街とは明らかに違う異質な雰囲気を漂わせていた。学校の校舎と工場が混ざったような外見、周囲のビルに輪をかけて機械的な入り口。入り口のセキュリティーは解除されているものの、外見だけでもそれが厳重である事は明白であった。もし解除されていなければここに辿り着く事すら出来なかったかもしれない。
「何なんでしょう、この建物……周囲と比べても、見ているだけで息苦しくなるというか、そういう雰囲気があります」
シレットが思わず後退るとアンナースは
「あら?怖気づいたの?」
と揶揄う様に口にする。それを聞いたシレットは
「そんな訳ないでしょ!!これでも修羅場は潜ってきているんだから馬鹿にしないで」
とむきになって反論する。それを見たアンナースは
「その位勢いよく反論出来るなら大丈夫みたいですね」
と細やかな笑みを浮かべる。それを見て察したのか釣られたのか、シレットも僅かにその顔に笑みを浮かべる。
「さあ、行くわよ!!」
コンスタリオがそう叫ぶと一同は建物の中に入って行く。明らかに怪しい建物であった為、相当な警戒を行うが、予想に反して迎撃部隊等は一切出てこず、コンスタリオ小隊は肩透かしを食らう形となる。
「怪しい雰囲気の建物ですけど……何も出てきませんね。ここにはあまり重要な物はないと言う事でしょうか?」
シレットがそう言って外れの雰囲気が一瞬漂う。だがその直後に目の前に見えた大広間を見たコンスタリオが
「いえ、外れではなく大当たりの可能性もあるわね……見て!!」
と発言する。コンスタリオが見えた物の正体が分からず、一瞬一同は
「何を言っているんだ?」
と言う顔をする。だがその視線の先に合った物を見た時、その顔は怪訝から驚嘆に変わる。その視線の先には夥しい数の血が壁や床に撒き散らされ、まるで血で塗装でもしたかのような光景が広がっていたからだ。
「な、何だよこれ……」
モイスが唖然として周囲を見つめる。どこもかしこも血塗れで目の逃げ場は存在しなかった。声にこそ出さないもののシレットも、そしてアンナースも同じだった。
「この世界での死は消滅を意味する。それは分かっているけどこれだけの血が塗れているとなると……」
「ここで内乱でも起こったのか、それとも廃棄する為に関係者を一掃したのか……どちらにしても禄でも無い事が此処で起こったのはまず間違いないわね」
アンナースが言いかけるとコンスタリオがそう続ける。その冷静さはこの状況では寧ろ以上に写っていた。
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