第392話 怒りの行方

その重く苦しい空気を換えることが出来ないまま、出撃した人族部隊は拠点本部へと帰還する。そしてコンスタリオ小隊はこれまで同様に司令官に事の経緯を説明するが、当然ながらその空気はこれまでとは比べ物にならない、否比べるまでもない程重く辛い物になった。


「そうですか……そのような事態になるとは……」


暗く重い言葉で告げられた現実に司令官の言葉も必然的に沈んだ物になる。


「はい……彼らの魂に報いる為にもこの戦争、勝たなければいけません!!」


コンスタリオはそれだけ告げると司令室を後にし、シレットとモイスも黙ってそれについていく。最後の言葉は語気こそ強いものの、その内側は今にも脆く壊れそうな雰囲気が感じられた。それが虚栄である事は司令にも察しがついた。その直後、入れ替わりにアンナースが入ってくる。


「アンナース様……一体これはどういう事ですか……」

「私もさっぱりよ、まさか自爆までするとはね。はっきり言ってこれは私も計算外。危うく取り込み対象を巻き込みそうになるなんて、上に文句をつけておかないと」


司令がアンナースに向けた顔はこれまでになく険しく、そして訝しい物であった。一方のアンナースも同じく険しく訝しい顔を向けている。今回の一件が余程気に入らなかったのだろうか。


「魔神族に対する怒りは増したから彼等を取り込む事が容易になっていったとはいえ、下手をすればその対象ごと灰塵に帰する事になっていたわ。それを実行させるなど正気の沙汰とは思えません」

「そうね。上に文句はつけておくわ。と言っても結局は現場が勝手にやった事で片付けられるでしょうけど。今まで私達がそうしてきたのだから」


言葉の内容からは自分達の行動を棚上げして怒りを露にしているかのようにも見えるアンナースと司令。だがその怒り自体は本物であった。

一方、自室に戻ったコンスタリオは今回の一件について未だ悔恨を感じつつもそれが持つ意味について考え始めていた。


「今回の部隊、あれだけ目立つ行動をしておきながら最後には自爆した……この矛盾は一体何?もし、スターが言っていたこの戦争の裏にあの自爆が関与しているのだとしたら、本当に……」


不可解な点、矛盾点を考え、スターが伝えてくれた情報と照らし合わせて思考するコンスタリオ。だが当然直ぐに答えが出る筈も無く、施行は暗礁に乗り上げる。それでもコンスタリオは考える事を止めない。それが今の自分に出来る精一杯の事だと思っているからだ。

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