第327話 時は止められない
「分かった、そっちについては星峰に任せるよ。僕達は僕達の出来る事をしよう」
天之御がそういうとその場は解散し、自室に戻った空弧は仕掛ける為の準備を始める為に部屋の端末を起動する。だが今回は時間は待ってはくれなかった。翌日星峰達を起こしたのは何時もの穏やかな日光ではなく城中に鳴り響くサイレンだったからだ。
サイレンで飛び起きた星峰は急いで謁見の間へと向かい、そこで天之御達と合流する。
「一体何が起こったの!?」
飛び込んで早々に星峰がそう大声を出すと天之御は
「例の拠点から人族部隊が多数出撃したんだ。規模からみると全防衛戦力の四分の一から半数はいると想像出来る規模で!!」
と返す。その声は星峰と同等かそれ以上の大きさであった。彼等が大声を出すという事はそれだけ今回の事態が想定外であり、且つ意表を突かれた事である事を物語っていた。
「人族部隊はどこに向かっているんです?」
岬がそう疑問として問いかけると星峰、天之御共に冷静さを取り戻し人族部隊の移動進路を追跡する。するとその目的地は先日から何度も問題の中心となっているオアシスである事が分かる。
「またあのオアシスか……一体あそこに何があるんだ?」
「分からない……けど、今回は人族を放置していてはいけない、そんな気がする。根拠はないけど、なんだか嫌な胸騒ぎがするんだ」
八咫が呟くと天之御がそれに続ける。その言葉を聞いた途端に全員の顔色が変わる。それも楽観出来るという顔ではない。明らかに不安と懸念が浮かんだ表情だった。天之御の第六感はそれほどの物なのだろうか。
「どうします?今からならまだ……」
「いえ、今からオアシスに転移しては此方がオアシスの秘密を知ったと思われて何をしでかしてくるか分からないわ。ここは一つ、先日の調査時に行ったあの場所に転移し、そこから調査を開始しましょう」
岬が焦って転移妖術を促そうとするが星峰は冷静にそれを止め、別の転移方法を促す。その声は何時もの冷静な星峰であった。その言葉に従う様にその場に居た全員が転移妖術で星峰が指定した場所に転移する。
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