第320話 苛立ちの正体
「空弧、自分の部屋に戻らなくていいの?」
星峰が優しげな顔でそう問いかけるが空弧は
「ええ、今は自分の部屋に戻るよりも星峰に聞きたい事があるから」
と即答する。それを聞いた星峰は黙って空弧を招き入れ、そっと椅子を用意する。そのスムーズな動き方はこの展開を予想していたようだ。椅子に座ると空弧は
「ねえ、昼間のあの発信機……」
と前置き無しに本題を切り出す。その切り出し方に星峰は
「やっぱり、その事についてなのね」
と返答する星峰、どうやら空弧が何を聞きたいのか、見当はついていたようだ。先程のスムーズな行動もそれ故の物だろう。だが空弧はあえてその点には触れず
「私が何を聞きたいのか、想像はついていたのね。あの街でああいうことをする奴等というと、私には思い当たる連中がいるから」
と星峰の予想が当たっている事について補足すると同時に強い語気で言い切る。
「……空弧の予想通り、私はあの少し前に声をかけられたわ。貴方の兄を名乗る魔神族に」
星峰がそういうと空弧は
「やっぱりね……」
と言い、しかめ面を見せる。どうやら先程言っていた連中というのは空弧の血族のようだ。
「空弧の血族は私達の入れ替わりについては把握していないわ。貴方の兄を名乗る魔神族は私を貴方だと思って話しかけてきたから」
「そうなの……で、話しかけられてどんな印象を持った?」
連中と言い放つ程とは言え、血族という関係上やはり気にはなるのか空弧は星峰にそう聞く。
「……正直に言えば気に食わないタイプね。軽くてチャラチャラしていて傍にいるだけでイライラしてきたわ。生理的に受け付けないタイプね」
星峰はそう返答する。あの場面でイライラしていたのはそれが原因だったのだろう、それを聞いた空弧はどこか納得した表情を浮かべる。
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