第319話 司令の判断
基地の司令室に戻るとそこには先程と同様基地司令が佇んでいた。その顔は先程と変わらない、だがどこか雰囲気が違う様にも感じる。
「天之御殿下、今回の一件についての最終的な報告ですが、無謀な作戦を立案、欠航した者は多大な損害を出したとして当面謹慎処分と致しました。ですが……」
「分かってる、これ以上の処分は難しいのでしょう。作戦そのものは正規の手順を踏んで行われたもの。それを追及するとなるとこちらも相応の証拠を用意する必要がある。でも現状でそれは難しい」
基地司令が無念そうな顔を浮かべる。それを見て心中を悟ったのか天之御も此れ以上の事は言わなかった。そのまま黙って転移妖術を発動し、星峰、空弧と共に帰還する。彼等の帰還を見届けた後基地司令は
「空弧ちゃん……君の因縁を断ち切る力添え、私もさせて頂くよ」
と密かに空弧に声援を呟くような小声で送っていた。彼女本人に伝えなかったのは何故なのだろうか?つい先程まで目の前に本人が居たというのに。
一方、ブエルスに帰還した天之御達は彼等の帰還を待ちわびていた涙名達と顔を合わせ、不在中に何かあったかを聞き、又自分達も何かあったか話していた。
「それじゃ、人族部隊に特に動きは見られなかったんだね」
「はい、侵攻等の大きな動きはどの大陸でも見られず、又ブントの動きも協力者からの情報からは入ってきませんでした」
八咫の説明を聞き、天之御達は事情を知る物の、星峰は何処か釈然としない顔を浮かべる。それに気づいた涙名が
「星峰、どうかしたの?いや、大体の想像はつくけど……」
と問いかけると星峰は
「涙名、ええ、人族部隊に何の動きも見られなかったのが引っ掛かるのよ。ブントの行動とはいえ魔神族の大部隊を撃退したというのは事実。その勢いに乗らずに大人しくしているという事はそれより優先するべき何かがあるという事なのかも知れないと思ってね」
と内心で今回の人族の動きの無さに疑念を感じていた事を話す。それを聞いた涙名は
「僕も同じ事を考えてる。何か嫌な予感がする」
と星峰と同様の不安を感じている事を口にする。一方街に向かったチームは天之御が
「こっちは当分の間ブントを抑えることが出来そうだよ。司令の下した処分によりブントの構成員は暫く勝手な事は出来ないだろうからね。それに民間レベルでも今回の不祥事は広まってる。既に民間の魔神族の中でもこの話は流れてるからね」
と説明し、ブントの動きは当分みられないと結論付けてその場を解散する。だが解散した後、部屋に戻った星峰の元にすぐさま空弧が訪ねてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます