第297話 進むしかないのなら

「都市……ですよね。しかもこの規模からするともし人族が住んでいたらどれだけの規模になるのか……」


シレットが困惑した声を上げ、モイスとコンスタリオもそれにただ黙って頷く。彼等にとってこの規模の都市は見た事が無い光景としか言い様がなかったのだ。自分たちが今まで見た事の無い規模の都市が地下に広がっている。その事実はコンスタリオ達を困惑させるには十分だった。


「これは……ここから出たら報告する必要があるわね。或いは地上に出る道もこの中に……」


コンスタリオがそう呟いた直後、都市の中より多数の兵器が確認でき、そしてコンスタリオ小隊に接近してくる。


「不味いぞ!!兵器がどんどんこっちに迫って来てやがる」


モイスが声を荒げて叫ぶ。それも無理はなかった、都市の中ほぼ全域より兵器の姿が確認でき、しかもしそれが全て自分達の元に向かってきているのだから。


「あの数に押されては流石に……仕方ない、一度引き返すわよ」


コンスタリオはそう言い、モイスとシレットにこの場からの後退を指示しつつ、自らも少しずつ足を後ろにずらしていく。そのまま全力で後退した三人だがその交代の途中シレットが


「あれ!?あそこを見て!!」


と言って脇道の一部を指差す。モイスとコンスタリオがその差した先を見るとそこには明らかに階段と思われる上向きの通路があった。


「階段?さっきはこんなものあったか?」


モイスがそう疑問を口にするとコンスタリオは


「気付かなかっただけか、それとも何らかの仕掛けが作動したのか……どの道今はこれに乗るしかなさそうね」


とモイスの疑問を肯定しつつも他に選択肢は無い事を告げる。既に兵器の追撃は振り切っている物の、先程の都市に戻る訳にもこのまま後退を続ける訳にもいかなかったからだ。それを重々しているモイスとシレットはコンスタリオに黙って頷き、彼女に従って発見した階段へとその足を進めていく。

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