第281話 暗闇の先に
人族部隊が戦闘不能になった事により、地下には少しの沈黙、いや静寂の時間が流れていた。だが一同の内心は静まらないどころか寧ろ高ぶっていた。それは怒りなのか、そうでないのか……
「この乗り物、このまま奪えば目的地まで連れて行ってくれないかな?」
涙名がふとそう口にする。だが言葉そのものは軽く思えてもその奥にこもっている思いは決して軽くはない、その場に居る全員がそれは分かっていた。それ故か
「それがよさそうだね。なら早速……」
天之御はそれだけ言うと行動に移り、他の面々も車両に乗り込んでいく。そして先頭車両の操縦席に行くと星峰が席に着き、機械を触り始める。
「どう?動かせそう?」
「ええ、機械そのものは軍事車両の応用で出来ているから操作系統も同様。寧ろ目的が移動とはっきりしているからそれより単純なシステムともいえるわね」
天之御の問いかけに自信たっぷりに答える星峰、その言葉に偽りはなく、星峰の操作で車両は問題なく動き出す。動き始めた車両は目的地が設定されているのか何もせずとも速度を調節し、その行き先へと辿り着く。
「ここは……さっきよりもさらに大きな空間だけど……」
窓から見える風景からそう呟く空弧、そんな空弧に天之御は
「とりあえず降りてみようか」
と提案し一同は列車の外に出る。するとそこには同じような列車が幾つも置かれており、そこが車庫であることは容易に想像がついた。
「同じような車両が幾つも……既に量産化が進んでいたと言う事でしょうか?」
「そう考えるのが妥当な線だと思う」
空弧の疑問に対しそう返答する星峰、それに対する反論はなかった。他に説明できる言葉もなかったからだ。
「見て下さい、あそこに小さいですけど建物がありますよ」
涙名はそういうととある方向を指差す、そこにはプレハブ小屋程度の大きさだが確かに何かの建物があった。
「本当だね、よし、調べてみよう」
天之御がそういうと一同はその建物に向かい中に入る。するとそこには小さいながらも様々な機械やモニターがあり、基地の指令室の様な雰囲気を醸し出していた。
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