第245話 空弧の苛立ち
「命の尊さをよく知ってる……か。今更だけど魔神族にも色んな生命があるのね」
星峰となって以来、ずっと頭の中では分かっていた事ではあった。だがこうして言葉にし、現実として受け止めていくとそれが真実であるという事をより強く認識せざるを得なくなる。星峰はそんな不思議な気持ちになっていた。スター・ボレードでは決して知る事の出来なかったであろう気持ちに。
「星峰の事は気にはなるわ。でも、私は無理に聞き出すことはしたくない」
「それは私も同じよ。だから……」
星峰の言葉に岬は何かを言いかけて止まる、だがその先何を言いたいのかは星峰には分かっていた。だからこそ言葉を止めたのだ。
一方その頃、その空弧は自室でベッドの上に座っていた。その顔は何処か険しく、何かを考えているように見える。
「生命の尊さを知らないブント……奴等らしいと言えばらしいけど……くっ」
その言葉には何処か苛立ちが見える。それを抑えるかのように立ち上がると近くにあったコップを手に取り、それに水を注いで飲む。そして水を飲み干し、コップを机の上に置くと
「私のすべき事、それは……」
と呟き、そのまま暫く立ち尽くす。その顔にはやはり苛立ちが見え、何かを抱えているように見える。そのまま時間は過ぎ、窓から翌日の朝日が差し込み始める。
目覚めた一同は何時もと変わらない朝を迎え、何時もと同じように食堂に足を運ぶ。
「昨日のあの後霊諍に連絡を入れたよ。やっぱり危機感を持ってくれたみたいで警備体制の強化を検討してくれることになった」
天之御のその言葉から今日は始まろうとしていた。
「再調査についてはまだ伝えていないのですか?」
「伝えてはいるけど時間はまだとれていない。あの規模の遺跡となると一回あたりの捜索にある程度の時間を割く必要があるからね。調査の最中に攻め込まれると……」
岬の問いかけに天之御が返答している最中に突如警報が鳴り始める。
「ほらね、こういう事になると大変でしょう」
このタイミングで警報が鳴った事に若干呆れつつも天之御はそう回答する。幸い全員食事は既に終えていたため、直ぐに警報の理由を問いかける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます