第244話 揺れる心の主
「決まっているさ。そう遠くない内にあの遺跡に二回目の調査に入る。あわよくば今回の一件で判明した技術を抑えられればいいんだけど……」
問いかけに対する天之御の返答は星峰の、いやその場に居た全員の予想通りの回答であった。天之御がこの状況であの遺跡を放置する危険性に気付いていない訳がない、それは分かっていた事だからだ。そしてそれは他の面々も同じであった。
「それが一番得策でしょうね。もし今回の一件で判明した技術があそこから出土したものだとしたら再びあの地が危険に晒される可能性が飛躍的に高まる事になります。当然、そんなことになれば彼等の身にも」
そう告げる空弧の言葉と目には既に危機感がこもっていた。だがその印象に星峰は何処か違和感を覚える。敢えてそれを口にはしなかったもののこれまで何度も感じているだけに単なる気のせいではない事は直感的に分かっていた。
「僕はこの後彼等に連絡を入れる。例え直ぐには調べられなくても警戒を強めてもらう必要はあるからね。君達は一旦休んでほしい。今後の行動がどうであれ、現状では下手に動けないからね」
天之御のその一言で一同はとりあえずその場を離れ、それぞれ自分の部屋に戻っていく。だが星峰が戻り、何時もの様にシャワーを浴びていると扉をノックする音が響いてくる。
「誰?」
星峰が問いかけると扉の向こうからは
「私、岬よ」
と岬の声が返ってくる。
「どうぞ」
そう言って星峰が岬を招き入れると岬は
「……ねえ、空弧の事何か引っかからなかった?」
そう質問してくる。それに対し星峰は
「引っかかる?それはどういう事なの?」
と問いかけ返す。星峰がこの質問をしたのは岬の問いかけ方が自分と同じ疑問を持っている様にも既に答えを知っている様にも聞こえたからだ。
「いえ、それならいいのよ。ただ、今回の一件で一番揺れているのは多分空弧だと思うから……ね」
岬のこの返答で星峰は後者の仮説が正しいと思う。だがそれだけでは当然全ては分からない。なので
「揺れている?それは空弧の過去に関係しているの?」
と質問で返してみる。すると岬は一瞬驚いた顔を見せる。だが直ぐに真顔に戻り
「……私も詳しくは聞いていないの。ただ、あの子は命の尊さを知らない存在には怒りが出る、そんなところがあるから……」
と曖昧な、いや、岬にも分かっていないのだろう。だからこうとしか返答できないのだという事は星峰には想像出来た。
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