第197話 残酷なる現実

「ああ、先程辛うじて逃れてきたワンカーポの兵士から聞いた情報だ。しかし正確に言えばワンカーポだけではない、東の大陸のタウン全てが陥落したという事だ」


ブエルス兵士長は神妙な顔、抑揚に乏しい声でそう続ける。それは人族部隊にとっては余りにも残酷な報告であった。ブエルスの陥落時とは異なり、今回は複数のタウンが同時に陥落した、そんな話を信じられる筈も無く


「そんな……」


とコンスタリオもただただ呆然とするだけであった。


「複数の街って……どうしてそんな……」


唖然としつつも辛うじて言葉を絞り出したコンスタリオに対し兵士長は


「如何やらワンカーポは独自に大陸の解放作戦を立て、動きを感付かれない様に場合によってはこちらに救援を要請するというつもりで行動していたらしい、だが……」

「それが裏目に出てしまった……と?」


兵士長の声は変わらず抑揚が無い、だがそれは自身の感情を必死に押さえつけているだけに過ぎないのは兵士達は分かっていた。故にそれを無情と罵る者、詰る者はいなかった。


「そう言う事だ。作戦開始直前、指揮の中心となるワンカーポの部隊の眼の前に魔人族部隊が突如として出現、出撃直前と言う最も隙が出来る部分を突かれ応戦が上手く出来なかったという事だ。そして中心となるワンカーポの部隊を欠いた状態での進軍を余儀なくされた他のタウンの部隊も総崩れになってしまった……」


兵士長の口から徐々に詳細が伝えられる。その詳細を聞けば聞く程兵士達の顔は重く暗いものに変わっていく。


「待って下さい!!動きを悟られない様に敢えて此方に連絡を入れなかった、にも関わらず最も隙の出来るタイミングを突かれたという事は……」


ハッと気付いた顔でシレットが声を上げると兵士長は


「ああ、スターの連絡にあった通り、ワンカーポに魔神族のスパイが潜入していた可能性が高い。そしてそのスパイが情報を外部に漏らしたのだろう」


と告げる。シレットの声でその予想はついたものの、現実にそれを突きつけられたショックは計り知れない物があった。


「今後についてだが、大陸一つが陥落した以上これまで以上に厳しい戦いが予想される。まずは大陸の守りを固める事を優先する」


兵士長の言葉に異を唱える者はいなかった。否、正確には異を唱える余裕すらも無かったのだ。それ程に兵士達は衝撃を受けていた。そしてその言葉を最後に兵士達は集合から解散するが、コンスタリオ小隊はコンスタリオの部屋に集まっていた。

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