第188話 赤い魔光

その直後、怒りを露にした八咫を狙って赤い光が遠距離より放たれる。怒り故に気付くのが一瞬遅れたのか八咫は回避動作が遅れその光を躱しきれず羽の一部を掠める。するとその光を受けた羽の一部が焼け落ち、バランスを崩す。


「八咫!!」


それを見た空弧が叫ぶ。その直後に八咫は体制を立て直し地面に着地するが先程のダメージはあるらしく焼けた羽部分を手で押さえる。


「狐妖術……純黒の癒し!!」


空弧がそう叫ぶと八咫の焼けた部分に黒い粒子が集まり、その傷を癒していく。


「くっ、すまねえ空弧、俺とした事が」

「それよりも今の光、どこから放たれたの?」


申し訳なさそうに話す八咫に対しこう返す空弧。そう言いながら辺りを見渡すが砲台らしきものは見つけられない。


「今の攻撃、何処から……」


一部始終を見ていた岬も動揺を隠せない。そして今度はその光が岬に放たれる。それを確認した岬は俊足を生かして難なく回避するものの、その光を受けた人族の兵器は解け落ち、兵士は蒸発する。


「人や兵器が一瞬で……どうやら長距離砲撃可能な熱線の様だけど、それにしても無差別に売ってくるなんて!!」


分かってはいた事ではあるが、ブントの非常な攻撃に改めて怒りを抱く岬、その怒りを力に変えたのか、格闘術で自身の周りに居る兵士や兵器を次々と薙ぎ倒していく。


「今の砲撃、方向から言ってワンカーポの街がある方から放たれていた。だとしたら考えられるのは!!」


星峰はそういうとワンカーポの市街地がある方へ顔を向ける。だが其方は当然敵が主戦力を展開している方向、近づくだけでも容易ではない。その間にも熱線は次々と放たれ、戦場を無差別に焼いていく。その光景を司令塔から見ていたイェニー


「ふん、奇襲をかけた筈だが躱されるとはな……やはり只者ではないか奴等は」


その言葉の内容とは裏腹にどこか余裕を見せた顔を浮かべていた。


「各タウンの部隊より入電、間もなく交戦に入るとの事です」


近くに居た兵士がイェニーに告げる。その報告を受けるとイェニーは


「そうか、ならば手筈通りやれと伝えろ」


と言い、それを受けた兵士は


「了解、ではそのように返信します」


と返信を送る。その直後別の兵士が


「フレアバスター、出力、発射速度共に安定、標的への攻撃を継続します」


と言い、それに対してイェニーが


「いちいち確認せずとも続けろ!!」


と少しイラッとした様子で発言する。するとイェニーが居る場所の下部分から赤い光が更に放たれ、その光は星峰を狙ってくる。直ぐ様回避行動に入ろうとした星峰だったがその直前に兵士に右足を掴まれ移動が遅れてしまう。


「くっ、こいつら、自分が死ぬのも……」


そういった次の瞬間に赤い光は星峰に直撃しそうになり


「星峰っ!!」


という空弧、八咫、岬の声が一斉に響き渡る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る