第187話 奇怪な兵士
それを見て居たイェニーは不敵な笑みを浮かべ
「流石は魔王……一筋縄ではいかない相手か」
と呟く。傍に居た兵士が
「魔人族の歩兵部隊、間もなく我が方の歩兵部隊と交戦体制に入ります。迎撃は間に合いません」
と報告してもその笑みは変わらず
「兵士に全力を出す必要は無い。必要最低限の反撃に留め、魔王に狙いを集中しろ、そして各タウンの部隊に伝達。そちらは予定通りに行動しろとな」
と表情を変える事無く指示を出す。それを受けた兵士も
「了解」
とだけ返答し行動に移す。その行動に意志は感じられない、まるで糸で操られる人形の様に言われたままに行動しているだけであった。だがそれを問い質す者も、ましてや異を唱える者も居ない。それ程までにブントの支配は浸透しているのだろうか。
「狐妖術……青き槍飛沫」
空弧はそういうと両手から水飛沫を放ち、その先端を鋭く変化させて兵士、兵器を攻撃し穴を開ける。だが兵士は痛がる事すらなくそのまま空弧に向かってこようとする。
「こいつ等、どんな鍛錬を積んでいるの?体に穴が空いているのに向かってくるなんて……」
その光景を見た空弧は動揺するが直後に兵士はその場に倒れ込み、そしてそのまま動かなくなる。それを見た空弧は
「死の直前まで命令を遂行する……兵士の鏡ではあるのかもしれないけど、こんな……」
と何処か動揺と共に悔しさを顔に滲ませる。
「黒き風刃!!」
空を飛びながらそう叫んだ八咫は羽から黒い衝撃波を放ち、その衝撃波を鋭利な形にして兵器や移動車を攻撃、破壊する。そして移動車から兵士が脱出してくるとすかさずその上に降り立ち、中に入って自爆装置を作動させて周囲を巻き込みつつ自爆させる。
「次々と進行してきやがるな……押し込まれたら終わりか」
そう呟く八咫の後ろを移動車が捕えていた。それに気付いていた八咫はすかさず飛行し、敵部隊を背後にして砲撃を躊躇わせようとする。だが移動車は躊躇う事無く砲撃し、八咫を狙ってくる。それを躱しはしたものの
「奴等め……味方を巻き込むのもお構いなしかよ」
と怒りを露わにする。
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