第177話 亡霊が守る物
目的の軍事施設に到着した一同はまずその外観を見渡す。そこは見る限りでも分かる程に先史遺産の技術がふんだんに使われ、外見から外の世界の、人族や魔神族の軍事拠点とは明らかに雰囲気を事にした施設であった。
「これが……この世界の軍事施設?雰囲気が全然違う」
岬がそう呟くが、何が違うのかを質問する者は居なかった。他の面々も岬と同じ感想を抱いていたからだ。何が違うのかははっきりとは言えないが何となく何かが違う。そうとしか言い様のない違和感と空気を感じていたのだ。
「ここで話していても仕方ない。兎に角中に入ってみよう」
天之御がそういうと一同は彼を先頭に中に入っていく。だが施設の正門を潜り、いざ入り口に近づくと突然
「くっ!?何」
と星峰と空弧が同時に言う。
「星峰、空弧、どうした!?」
八咫が問いかけると二人は
「何か……とても寒々しい何かを感じます!!」
「ええ、それもこれは負の思念……恨みや憎しみの類の何か」
と言う。
「思念!?でもここに何も……」
周囲を見渡した岬はそういうが直後に天之御が
「いや……二人の感覚は正しいよ。来る!!」
と言い臨戦態勢を取る。その発言通り、一同の周囲を薄い靄の様な物が覆い初め、その中から半透明な状態の霊諍の同族らしき魔神族が現れる。
「あれは……外に居た彼等と同族の様だけど……」
涙名がそういうと一同の警戒は一瞬緩む、だがそれは直後に元に戻る事となる。その生物が一同を見るなり爪を立てて飛び掛かってきたからだ。
「つっ!!いきなり何!?」
岬が前に立ち、その爪を裏拳で弾きつつへし折るとその魔神族は地面に叩き付けられて転がる。だが直ぐ様立ち上がり、再び一同に向かって突進してくる。
「闇爪斬」
涙名がそう言いながら飛び掛かってくる生物に対し黒く染めた爪を振り上げ、その生物を真っ二つにすると生物は消滅していき周囲の靄も晴れる。
「何だったの、今のは……」
「恐らく、この施設に、いえ、この世界に染み付いた残留思念が実体を持った存在だと思います」
涙名の問いかけに対しこう答える空弧、その答えに八咫は
「どういう事だ?」
と問いかける。どうやら事態が呑み込めていない様子だ。
「今の生物から感じたんです。ここから先には行かせない、お前達にこの施設は利用させないと」
「お前達に利用はさせない?つまり俺達がここから先に行くことを拒んでいるって事か?」
空弧の返答に更なる疑問を抱く八咫、それに返答したのは
「いや、恐らくは嘗てこの世界で内乱か何かがあってその時に敵に殺された魔神族の残留思念が今尚残っているんだ。そして僕達をその敵と思って襲ってきた。そんなところだと思う」
という天之御の言葉だった。
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