第176話 餅は餅屋、軍事は軍事施設

「それは分かったけど、具体的に何処を調べるつもりなの?」


星峰が空弧に問いかける。それも最もな話ではある、地図を入手出来たと言ってもその範囲は広く、手当たり次第に捜索していては時間が掛り過ぎるのは容易に想像出来た。無論、星峰もその点は分かっており


「これを見て欲しいの。納品先はこの近くだとさっきの家みたいな一般家庭が中心だけど、距離が離れるにつれて軍事施設が中心になっているの」


と地図データの統計を説明する。星峰の言う通り、距離が離れるにつれて軍事施設への納品が多くなっているのは分かった。それを見た八咫は


「おいおい、それじゃここでは兵器も製造してるって事か?」


と困惑した声を挙げるが星峰は


「その可能性も無くはないけど、今重要なのはそこじゃないわ。距離が離れる程軍事施設の割合が増える。しかもこれ、この街を囲う様に軍事施設が展開されている事を表しているの」


と言い、軍事施設が円形且つ街を中心に取り囲む様に建設されている事を説明する。その説明を聞くと星峰の真意が読めたのか天之御は


「成程、星峰の言いたい事が分かったよ」


と語る。その顔は笑顔で満ちていた。その顔から察したのか、星峰の顔にも笑顔が見える。


「つまりこういう事でしょう。先史遺産の内、軍事転用されている物を調べるのであれば軍事施設を調べるのが一番の近道になる。そしてその対象を絞り込む事が出来た。だからこのデータは有用なんだって事でしょ」


天之御がそう解説すると星峰は無言で頷く、だがその顔は笑顔が満ちたままであった。それは本心を正解した事を意味していた。


「じゃ、早速ここから一番近い軍事施設に向かおうか。と言ってもこの数、一日では調べきれないね」

「ええ、何度かに分けて調査する必要があります」

「彼等が何度も立ち入るのを許してくれるかどうか……その点も重要なポイントになるか」


二人の顔から徐々に笑顔が消え、少し険しい表情になるのが周囲からも見えた。表示されている軍事施設の数は二桁はあり、一日で全て調査するのは不可能だと目に見えたからだ。だがそれでも足を止める訳には行かない一同はここから最も近い軍事施設に向かって移動を開始する。

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