第170話 霊諍の故郷
「そうして僕達の事情に配慮して頂けるのはとても嬉しく思います。ですがこれ以上故郷を悪用されるのは祖先も決して望んでいないと思います。ですから……」
天之御の顔を見、言葉を聞いた霊諍は神妙な顔つきでこう話す。それを見、聞いた天之御は
「分かった。そこまでの決意があるのならこれ以上は何も言わない。君の申し出を受けて君達の故郷の先史遺産を調査する」
と同じく神妙な顔つきで返す。だがその顔からは確実に何か強い意志が感じられた。星峰と涙名は事情は彼等の間に何があるのか、事情は全く分からない。だがそんな彼等でさえ感じられる程にそれは強く確実な物であった。
「では、早速行くのですか?」
岬がそう尋ねると
「ああ、霊諍が重い腰を上げたんだ。ぐずぐずしている訳にはいかない!!」
と天之御は返答し、一同に直ぐ様転移妖術を使う。そして転移妖術による移動が終わった先は一面が深い緑に覆われた森の奥と呼ぶのが相応しい場所であった。周囲を見渡しても深緑の木々が生い茂り、微かに差し込む日光は平地と違いどこか不気味にも見える。
「ここが……彼等の故郷?」
涙名がそう呟くと天之御は
「そう、ここが霊諍達の故郷、青木樹海だよ」
と告げ、それと同時に足を動かし始める。決して急かしたり焦っている訳ではない、だがどこかぐずぐずもしていられない。そんな雰囲気がある足の踏み出し方であった。当然その後を星峰達もついていく。が、その直後に目の前に集落らしき小さな居住地域が目に入ってくる。どうやら天之御はここを目指していた様だ。だがそこは規模こそ集落という言葉に当てはまる物の、樹海には似つかわしくない高度な機器が多く使われており、その技術レベルは各大陸の首都にも匹敵するのではないかと思えるレベルだ。
「凄い……樹海の中にこんな場所があるなんて……」
ブエルスに居住していた星峰でさえその光景には目を奪われずにはいられない。それ程までにその場所は異質感があった。するとその集落から霊諍の同族らしき魔神族が何体も駆け寄ってくる。そして駆け寄ってくると
「天之御様!!」
と口々に話し始める。
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