第169話 故郷に眠る災い

「君達の故郷からもたらされた……それは一体どういう事!?」


真っ先に困惑した声を挙げたのは天之御だった。普段の彼からはそんな声はとても想像出来ない。それ程イレギュラーな回答だったのだろう。霊諍もそれを察したのか


「天之御様の困惑も最もだと思います。私自身この事実を初めて知った時は困惑しましたから」


と自身も困惑した事を告げる。故郷から敵の新技術がもたらされていたという事実だけでもそれは納得に値するとはその場に居た全員が思う事であった。だが空弧は


「でも待って、確かに貴方達の故郷には先史遺産はあったけど故郷そのものは先代の魔王様がお守りになった筈でしょう。それに占領はされていないわよね。なのに何故?」


と現状との乖離点を指摘する。だがそれに回答したのは


「考えられるのはその襲撃の時にブントがその技術を持ち去った。と言うよりそれしか考えられない。襲撃を受けていたと同時に遺産の、少なくとも一部の入手は許していたんだ」


と低く深刻な声でそう告げた天之御であり、その回答に


「私も同意見です。それ以外に考えられるケースはありません」


と霊諍も同意する。


「持ち出された一部の技術だけでこれだけ厄介な兵器を作り出された。もし万が一他にも持ち出された技術があったとしたら厄介な事になる可能性が高いわね」


星峰がそう告げると八咫が


「ああ、しかもあのエリアは複数の先史遺産が一か所に纏まって存在している。もしかしたら再度襲撃をかけてくるかもしれねえ」


と同意し、更に警戒心を強める様に声を強めて言う。それ程先史遺産という物が重要度が高い事を察するのには時間はかからなかった。


「そこで提案なのですが、再度の襲撃を受ける前にこちらから先史遺産を調査した方が良いと思うのです。先に入手する事が出来れば少なくとも敵に入手されて脅威となる事は無いかと」


霊諍がそう告げた時、その場に居た全員が呼び出しの意図を理解した。彼はこの提案を聞いてもらう為にここに呼び出したのだ。だが天之御は


「先史遺産を先にか……でも大丈夫なの?君達の故郷は……」


と何か懸念がある表情を見せ、霊諍に問いかける。

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