第167話 佇む天之御
その夜、天之御は一人自室で佇んでいた。その傍には今回の一件の報告書、資料が整然と整頓されている、恐らく直前まで眺めていたのだろう。天之御の顔は漸く終わったという印象の安堵感が微かに感じられた。
「今回は人族側も協力してくれたから被害の拡大は阻止出来た。けど、彼等にブントの毒牙が向かっていったら大変な事になる。そうならないように此方に矛先を向けさせないと」
夜空を見ながらの天之御の呟きは小さな声ながらも大きな意志が感じられた。その根底に何があるのか分からない、いや計り知れない大きな意志を。そしてその呟きの後、天之御は机に戻り、目の前の機器を操作してデータの整理を始める。そしてそれらが粗方片付いたタイミングで一通の文章通信が届く。
「文章通信か、送り主は霊諍。どうやら先史遺産について何か動きがあったみたいだね」
と開封前に予測する。その予測通り、その内容は
「魔王様、先日の先史遺産解析、実用化が完了致しました。これで自然系の妖術を擬似的ではありますがどの兵士、いえ、民間でも使用する事が出来る様になります。
それと、先日人族部隊が投入してきたという光学迷彩についてですが……霊諍」
と先史遺産についての事であったが、その最後の方の文章を見た天之御は
「え……」
と驚きの表情を浮かべる。
翌日、城の外壁に朝日が差し込むと同時に食堂に行った天之御はそこに星峯達が全員揃っているのを確認するとその直ぐ傍の席に座る。
「どうしたんです、何が動きが?」
天之御の様子から何かを察したのか、空弧が直ぐ様訪ねる。すると天之御は
「うん。光学迷彩について霊諍から話があるそうなんだ。だから食後、君達にも例の秘密基地に来て欲しいと連絡があった」
とその要件を伝える。それを聞いた涙名が
「光学迷彩についてですか?」
と再度問いかけると天之御は
「うん。確かにそう書いてあった」
と言い、文章通信が来た事を伝える。それを聞いた一同は食事を終えると早速転移妖術で例の秘密基地に向かう。
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