第153話 涙零す追伸
休息を命じられ、自室に戻るシレット。自室に戻った彼女は部屋に置いてある端末の確認を行う。スターの連絡があった日以来、彼女はSTARからの連絡がある事を祈りながら端末を確認するのが日課となっていた。それ程彼女のスターを思う気持ちは強く特別なのだ。そしてその思いが届いたのか、スターからの通信は来ていた。
「スター……貴方は今どこに居るの……」
そう思いながら通信を開くスター、だがその内容は
「シレット、近々東のカイロタウンに居る魔神族の一部隊がオンティーズタウンへの侵攻を開始するという情報を入手した。真偽の程はまだ分からないが警戒してくれ」
というそっけない一文が目に入って来るだけであった。
「……もう!!私の、私達の気も知らないで!!」
その業務的な文章が目に入り、シレットは思わず癇癪を起しそうになる。だがその直後、画面ぎりぎりに映っていた
「追伸」
の二文字が目に留まる。その二文字だけで思わずシレットは困惑する。人族部隊として行動を共にしていた時でさえ、スターが追伸を述べた事は只の一度たりとも無かったのだから。突然の追伸に困惑しつつもその先を確認する。そこには
「シレット……すまない。体が魔神族である以上姿を見せられなくて。だが、俺はこの世界を平和にすると言う気持ちは捨てていない。姿が違っても気持ちは変わらない。それだけは覚えていてほしい。そして、何時の日にか……」
と書かれていた。それを見たシレットは
「……もう、そんな事言われなくたって……何時か、又肩を並べましょう」
と少し涙ぐみながら呟き、その涙を拭うのであった。だがその涙で緊張の糸が切れたのか、彼女はそのまま眠りについてしまう。翌日、早朝に目を覚ましたシレットは慌てて兵士長にスターからの通信について話す。眠りについてしまったために連絡が遅れてしまった事を謝罪しながら。
「そうか……だとするとその予測は正しいな。つい先程その部隊と思われる魔神族の戦力が移動しているのを上空から確認出来た。目的地も一致している。直ぐに現地に伝えて迎撃態勢を整えさせよう」
兵士長がそう言って通信を入れている所にコンスタリオとモイスも入ってくる。
「兵士長、此方からも戦力を派遣しなくて宜しいのですか?」
早々に焦った声でコンスタリオが話す。どうやら外で話は聞いていたようだ。それを聞いた兵士長は
「キャベルの部隊を動かす訳には行かんからな。だが……」
と少し含みのある返答をする。その含みを察したコンスタリオは
「なら、私達が行きます。新兵器のテストも兼ねて」
といい、モイス、シレットと共に出撃体制を整え直ちに出撃する。勿論、昨日の新型飛空艇で。
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