第145話 願ってもない誘い

その人族は会議出席者の顔を見ると不敵な笑みを浮かべる。


「久し振りだな、キャベルの皆さん」


それが第一声だった。それを聞いたキャベル防衛部隊長は


「……ああ」


と重い言葉で返答する。如何やら彼等は顔見知りの様だが、その雰囲気はお世辞にも仲良しや顔馴染みと言った空気ではなく、寧ろ張りつめていた空気が更に張り詰める、そんな雰囲気を醸し出していた。


「あの……貴方は?」


張りつめた空気を解消するべく、コンスタリオが問いかける。するとその人族は


「ああ、これは失礼、私はワンカーポ防衛部隊長を務めるイェニーと言う者です。この度の連絡は貴方方に新兵器を提供しようと思いまして」


と余裕なのか見下しているのか判らない様な口調と言葉遣いでコンスタリオ小隊に話しかけてくる。


「私達に……ですか?」


コンスタリオは動揺しながら返答する。直ぐ近くにキャベルの防衛部隊長が居るのにそれを無視して自分達に話しかけてくる、その真意を測りかねていたのだ。


「ええ、ブエルスの一件は私共の耳にも入っております。その不幸はお察ししますが、かといって何時までも落ち込んでも居られない、そうでございましょう?」

「ええ、それはそうですが……」


イェニーの言葉にシレットは頷く、いや、頷くというよりも頷かざるを得ない。それは的を得て居たからだ。


「此方としてもこれ以上ブエルスの様な悲劇を繰り返す訳には行きませんので。なので貴方方に新兵器を提供したいのです。無論、そのデータを見返りとして受け取るという条件付きではありますが」


そう告げるイェニーにモイスが


「データを見返りに?どういう事だ」


と問いかけるとイェニーは


「この度の新兵器は兵器そのものは大変優秀ではあるのですが、それ故に我が方に扱いきれる人員が居ないのです。その為、ブエルス防衛部隊の中核を担っていた貴方方に使用して頂きたい。その見返りとしてデータを受け取る、これが我が方の依頼です」


と回答する。


「成程……ではコンスタリオ君、どうするかね?」


ブエルス兵士長がコンスタリオに問いかける。その問いかけにコンスタリオは


「えっ!?私が返答するのですか?」


と困惑するが兵士長は


「我々の中核は君達の小隊だ。故に君に決めて貰いたい」


とコンスタリオに決定を促す。それを聞いたコンスタリオは少し難しい顔をするが


「……分かりました、その取引、受けましょう。但し、受け取りはこちらからそちらに出向いて行います」


と告げる。返答を聞いたイェニーは


「おや、直接来られるという事ですか?態々そんな事をされなくてもきちんとお届けするつもりですのに、ですがそれがそちらの要望であればそうしましょう。何時でもいらして下さい。私の名前を出せば兵は道を通しますから」


と言って通信を切る。

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