第103話 見える部分 見えない部分
一方、モイス、コンスタリオと分断されたシレットは同じく分断されてしまった兵士と共にもと来た道は引き返さず、そのまま麓の村付近に出る山道を歩いていた。その途中
「最初の交戦以来、魔神族の兵士は出てきませんね。このルートは守りが手薄なのでしょうか?」
と兵士の一人が呟く。するとシレットは
「かもしれないけど、それすらも計算ずくの罠って事も考えられるわ、決して油断しないで」
と気を抜きそうになる兵士と自分に釘を刺す。しかしそれにも関わらず一向にあ人族の兵士は出てこない。そうこうしている内に麓の村近く、村を見下ろせる山道の部分まで辿り着く。
「麓の村まで辿り着けましたね。ここを先に奪還しますか?」
兵士がシレットに耳打ちするとシレットは
「それもいいのかもしれないけど、まずは状況を確認する必要があるわ」
と言い、近くの気に身を潜め、そっと村の様子を伺う。するとシレットの目に魔神族が人族の親子の傍に立つ光景が見えてくる。その光景が何かの威圧、脅迫を伴うものであることは肩を寄せ合い震える親子の姿から容易に想像出来た。
「あの魔神族兵士、一体何をしているのでしょう?」
兵士の一人が光景を見てそう呟くとシレットは
「ここから聞くには・・・ウィンド・ボイス!!」
と言い、言葉を聞く魔法の風を飛ばし、風から入ってくる言葉をその耳に入れる。
「その魔法は・・・一体何を話しているんです?」
魔法の効果を知っているのか、兵士はすぐさま本題をぶつける。
「・・・おい、何時までも震えてないでさっさと来い!!外の敵に対する備えの為にな」
シレットがそう発言するのと魔神族が親子を連れていくのはほぼ同時であった。
「親子が・・・それに今の発言、まさか・・・」
兵士がそういうとシレットは黙ってすっと立ち上がり
「・・・行きましょう!!その前に作戦を成功させる」
とだけ告げて足を再び動かし始める。兵士達もシレットの言いたいことを察したのか、同じく黙ったまま足を動かし、山道を再び歩き始める。そしてある程度進むと魔神族の兵士が出現し始める。しかしシレット達はそれをものともせずに退け、先へと進んでいく。
一方、魔神族が連れて行った親子はシレットが先に進み始めると同時に兵士に対し
「これで良いんですよね?」
と先程の震えも見せずに平気な声でそう口にする。そして兵士も
「ええ、これで山側の人族部隊が勢い任せでこちらに来ることはないでしょう。そして、そろそろ顔を合わせられる頃です」
と先程までとは全く違う穏やかな口調で返答する。それと時を同じくしてシレットが足を止め
「お、お前は・・・」
と怒りを感じさせる。その言葉と視線が投げかけられた先に居るのは空弧だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます