第96話 キャベルの土壌

キャベルの市街地はブエルスのそれとは異なりどこか物々しい空気に包まれていた。それは決して現状人族側が劣勢だからという理由だけで片づけられるものではない。それを感じたのか


「なんか・・・市街地なのに城の中とあまり変わりませんね・・・」


とシレットがこぼし、モイスも


「ああ、どこもかしこもピリピリしてやがる。これじゃ気持ちを落ち着けるどころか却って神経を擦り減らしそうだぜ・・・」


と同意する。辺りを見渡すとお店も全て室内営業であり、露店や列をなす民間人もいない。それも又ブエルスとは異なる異様な空気を醸し出していた。


「キャベルはずっとこうだったのかしら・・・だとしたらなんだか息が詰まりそうね。排他的というか何というか・・・」

「排他的なのは仕方ないさ。なんせココは食うか食われるかの文化が土俵にあるからな」


コンスタリオが呟いた直後、背後から民間人の男性がそう話しかけてくる。その声に驚きながら三人が振り返るとその男性は


「よお、あんたらがブエルスから来たっていう軍隊さん達か。そっちでは色々大変だったみたいだな。だが、ここの連中に同情は通用しないぜ。なんせここは魔神族と戦争してなきゃいつ内乱が起きても可笑しくない場所だからな」


とさらりとその口から恐ろしい言葉を出す。その言葉に反応せずにいられなかったシレットは


「内乱って・・・そこまで酷いんですか?」


と問いかける。その男性は笑顔を少し曇らせて


「ああ、ここは兎に角上に登ろうとしている奴らが犇めいているからな。魔神族との戦争中でさえ、それが常に表れてる。場合によっちゃ魔神族より身内の方が恐ろしいって言われる位だ。魔神族相手にとりあえず集まりだしたのもここ十年位の話だからな」

「十年位って・・・魔神族との戦争は何十年、いや何百年単位で行われているのにその中で内乱が起きていたんですか!?」


男性の話を聞いたコンスタリオは信じられないと言わんばかりの口調と表情を挙げる。


「あ・・・ああ、俺は実際にそれを見ながら生きてきたからな・・・上の方がなんか良からぬ事をしてるなんて噂、常に流れてるしな」


コンスタリオの様子に男性は少々たじろいでしまうが、それでも何とか返答を返す。


「た、隊長、姿勢が・・・」

「本当ね、申し訳ありませんでした」


シレットに指摘され、自らが男性に迫っていた事に気付くコンスタリオ。男性に謝罪し、罰が悪そうにその場を走っていき、それを見たシレットとモイスも後を追いかける。そしてシレットとモイスが追い付くと


「私達は・・・非常時とはいえとんでもない所に転がり込んでしまったのかもしれないわね・・・」


とコンスタリオは深刻な顔で呟く。

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