第85話 魔神族作戦前一幕

~作戦数時間前、ブエルスの謁見の間にて~


「人族部隊がメコシタウンに侵攻しようとしている!?」


驚いた顔でそう叫ぶ空弧に天之御は


「うん、人族側の協力者からの裏付けもある確かな情報だよ。それに実際、部隊の移動も確認出来てる」


と告げ、世界地図に兵力の熱源反応を表示させる。そこには確かにキャベルからメコシタウンに向かう反応が多数記されていた。


「人族以外の反応も感知されていますが、これは?」


今まで見た事の無い反応に気付き、問いかける岬、その問いに天之御は


「協力者からの情報で今回の部隊には新たに開発された新兵器が戦力として組み込まれていることが分かってる。おそらくその反応だ」


と答える。


「メコシは私達側の町、となるとその目的は解放の名を借りた制圧でしょうね。現地にも防衛戦力はありますが、それでもこうしてこちらにもお話が来るという事はやはりその新兵器を警戒しての事ですか?」

「それだけじゃないよ。この部隊の中には彼等が組み込まれているんだ。コンスタリオ小隊がね!!」


空弧の質問に対する天之御の返答はその予想の上を行っていた。それを聞いた空弧と星峰は明らかに顔が引きつり、険しくなる。


「お、おい、その部隊って確か・・・」


星峰や空弧の様に顔を引きつらせこそしないものの、自身も一応程度ではあるが面識がある八咫の声にも動揺が混ざる。


「ええ、私の・・・嘗ての仲間です」


神妙な顔、且つ低い声で呟く様に声を出す星峰、そんな星峰を見て


「あの・・・星峰・・・」


その心境を察したのか、空弧は心配そうな顔と声を向ける。それに気づいた星峰は


「大丈夫よ、私は迷わない。何時かこんな日が来る事は分かっていたから。でも、だからってそれで終わらせるつもりもない。直ぐには無理でも・・・」


と昨日の決意を新たに口にし、その顔にも決意が現れる。


「ありがとう、星峰。実をいうと今回の出撃はコンスタリオ小隊が組み込まれているという部分を大きく見ているんだ。星峰、一つ確認しておきたいんだけど」

「コンスタリオ小隊の面々がブントの正体を知った上で協力する可能性は無いとは言い切れません。ですが低いとは言えます。

ですが、ブントがコンスタリオ小隊を自分達の戦力として侵攻させているという事は・・・」


天之御の質問に対する星峰の返答は天之御の望んでいた返答であった。だがそれは別の悪い予測を色濃くする事でもあった。


「新兵器の事も含め、放置は出来ない。直ちに出撃し、人族の侵攻を食い止めて欲しい」


天之御はそう告げると星峰達は一斉に出撃する。


~作戦終了後~


「この少年が・・・今回の協力者・・・」


その話を聞いた後にその少年を見つめると、顔も雰囲気も変わらないのにどこか不可思議な何かを感じる。星峰達はそう思わずにはいられなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る