第66話 それは真実ではない

ブエルスでの敗戦後、人族部隊が後退した南の首都キャンル、そこでも全く同じ色、同じ世界地図を用いてその場に集まった人族部隊に同様の説明が行われていた。黄色と紫が無く、ブントについての説明もなされていない事以外は。


「ブエルスの陥落により、他の街への侵攻は容易になる・・・か。確かにブエルスは四つの大陸のほぼ中心に位置する。そこを抑えられたのは痛いわね・・・」


兵士長の解説を聞き終えるとコンスタリオは呟く。


「次にブエルス陥落の件だが、奴らは人の体を奪う妖術を使いスター中尉の肉体を奪って内部に部隊を手引きしたようだ」


兵士長が告げた事実にコンスタリオ達兵士は騒然とする、これまで見た事はおろか、聞いた事すらない驚異の魔法の説明をいきなり受けたのだ。動揺が広がり、騒然とするのも無理はない。


「つまり、スターに成りすまして手引きしたって事ね・・・」

「ですが、兵士長、その妖術の情報はどこから?」


魔神族の行動にシレットは憤るがコンスタリオはその前に浮かんだ疑問をぶつける。


「その妖術を使う所を偶々目撃した民間人がいて、それを報告してくれたから知る事が出来た」


兵士長は直ぐ様返答するが、コンスタリオの内心にはどこか納得出来ない部分があった。


「ブエルスが陥落した今、魔神族を勢いに乗せてこのキャベルまで攻め込ませる訳にはいかん!!これ以上の侵攻を阻止する為にも戦力の増強は急務となる。各員、日々の鍛錬を怠るな、では解散とする」


兵士長の声に号令をかけて兵士は解散し、そのまま各自行動を取る。コンスタリオは何時も通りモイス、シレットの二人と行動するがその顔は何処か浮かない、いや、腑に落ちない物であった。


「体を奪う妖術か・・なら、今後スターにあったとしてもそいつはスターじゃないって事か」

「絶対に本物のスターを取り返してやるんだから・・・」


警戒心を強めるモイスと決意を新たにするシレット、だがコンスタリオは


「本当に・・・それだけなのかしら?」


と内心で感じていた疑問を口に出す。


「どういうことです?それ以外に・・・」


モイスが聞き返そうとするとコンスタリオは


「何か引っかかるのよ。幾つかの点でね」


と言った後に疑問点を語りだす。

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