第65話 古巣への帰還
「で、早速だがこれから俺達は行動の拠点をブエルスに移すことになる」
「ブエルスに?」
八咫が唐突に話した内容に少々戸惑う星峰、いや内容ではない、ブエルスという単語に戸惑っていたのだ。
「うん、詳しくは移動した後に話すよ。だから今は・・・」
「心配しなくてもいい。私はもう迷わない」
星峰の動揺を悟ったのかすかさずフォローを入れようとする天之御、だが最早星峰に迷いはなかった。態々口にするまでもなく、それは雰囲気が物語っていた。
「分かった、じゃ、行くよ!!」
天之御はそういうと移動魔法でその場に居た全員を移動させる。その移動先はブエルスの城、王族謁見の間であった。ルイナとの関わりから星峰も立ち入った事があり、この光景は記憶に良く焼き付いていた。そして正面にある椅子に腰かけた天之御は今のこの世界の状況を説明する為、妖術でこの世界の地図を出現させる。
「これは?」
「この世界の地図だよ、色分けは赤が僕達魔神族、青が人族」
天之御の言葉通り、その地図は赤と青の二色に分かれていた。だが分断されているわけではない、寧ろ一方の中にもう一方がある玉虫色に近い配色であった。
「これだけだと双方が点在しているように見えますね。ですが実際は・・・」
空弧がそう言うと天之御は地図の色の一部を紫と黄色に変化させる。
「これは?世界の一部の色が変わりましたが・・・」
「紫は先日君が行った村の様に共生が成功している場所、黄色はブントの支配下に置かれている場所だよ」
変わった理由を聞く星峰に対し、天之御は想定していたと返答を返す。
「点在しているエリアはほぼブントの支配下と言う事ですか・・・!!各大陸の首都まで!?」
「そう、人族側のブントの支配は魔神族と比べてもかなり強い、ブエルスの周囲は徐々に開放しつつあり、点から線に、そして面になりつつあるけど他の地域は・・」
予想以上の侵食を受けていた事にショックを受ける星峰、自分の戦いその物が周囲に仕組まれていた、そう考えざるを得なかったからだ。だが一方で自分は知る事が出来ただけ幸福ではないかとも思っていた。知らなければずっと踊らされていた。そう、別の場所ではまさにそれを象徴する事になっていたのだ。
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