第17話 高品質装備・お手軽装備まとめてウェルカム!
昨今、レイムーンLARPや他のLARPゲームに参加される方々の衣装レベルが上がったと感じる。それはつまり、ゲームに対して真摯に懲りたいという一途な想いが形になったことなのだ。そのことそのものは、とても素敵なことだと思う。
のだが───
「うーん。私はちょっと怖いなって感じてもいるのよね」
「なんでだい、ゆーさん?」
「私もコスプレイヤー界隈の人では無いんだけど、別のそっち方面の方から話を聞いてね。今、コスプレイヤーさんたちも、『高品質で精巧な鎧を作っていれば評価されるし、偉い。凄いことをしているのだから当然』みたいな、高品質なものを作る人たちが多くなってきちゃって、逆にお手軽装備の人たちをあまり評価しない風潮が一部にあるみたいでね」
つまり、気軽に作ってみようかな、着て参加したいな、と思う人たちを遠ざけてしまっているのだそうだ。それは、参加するハードルを上げることになる。ひいては、全く初体験の初心者さんが参加しづらい空気も生むだろう。
もちろん又聞きに聞いた話で実際に見たわけでは無く、そういうことに気をつけている団体もいると思うし、本当に一部の方々のみと思いたいのだが───どうしても高品質な衣装は見栄えが良く、そちらにギャラリーも目がいってしまうし、全体的に「高品質であらねば」という意識に向いてしまいがちなのも理解できる。
「ゆーさんは、これがLARPゲームにも起こるかもしれないと思っているんだね」
「うん。一つの方法としては、高品質装備とお手軽装備のサークル・イベント住み分けだと思うけど、これって結局……根本的な解決にはなりにくいと思う。これは推測だけど、結局「高品質は偉い」という意識を変えていかないと、住み分けしても全体としては居心地の悪い空気になり続けると思うんだよね。お手軽装備側も、高品質な装備の人たちと一緒にいると気後れしてしまう気持ちも分かるし」
「本当にそうかな。そうやって気後れしてしまうという常識を、自分で作ってるだけじゃ無いかな?または、周りが作ってるだけかもしれない。その常識とやらが足枷になるというのなら、どちらが一緒にいても『問題とは思わない』という常識を新たに作っていけば良いのではないかな」
「ふむふむ。それなら、高品質装備もお手軽装備も両立していけるかな。だとするなら、日本のLARPゲームの先陣を切るレイムーンLARPは良いお手本にならないといけないね」
レイムーンLARPは今、防具関係を本格鎧と模造鎧に分けており、本格鎧の方に防護点ボーナスが行く形にしていた。これは元々は、カーミニアLARPが模造鎧(=手作り装備)の使用をほぼ不許可にしていたので、その解放をするため、こういったルールを適用したのだ。
しかし、もしそういう風に捉える人たちが出てくるのなら、本格鎧ボーナスは無しにした方がいいのかもしれない。(※1)
(※1)……こちらについてはまだスタッフの中で議論中ですが、どちらにせよ双方に良い形を考え中です。
「あとは、出来るだけスタッフやNPCの服装はシンプルにいこう。それこそ、古着等の簡単加工、お手軽装備だ。部分鎧もうちでレンタル出来るものにすれば、少なくともこの格好になれるよ、という証左になると思う」
「うんうん。お手軽装備の人たちが自分で恥ずかしいと思う必要のない環境と意識。高品質装備の人たちも、お手軽装備の人たちを見下さない、馬鹿にしない環境と意識。これらがしっかりしていれば、きっと、どちらの装備があっても『よし』と思える世界を作れると思う」
「もちろん、個々の価値観によるものでもあるので、それでも『嫌だ、一緒にいたくない』と感じるなら強制はできないけどね。でも、もしそういう環境であれば、そしてそういう環境が多ければ多いほど、随分初心者にも優しい世界が作られるんじゃないだろうか」
これは非常に意義のある話し合いだったように思う。そして、「実は」コスプレイヤーを経験していない私たち夫婦にとって、この考え方は目から鱗であり、常に考えておくべきことだなと感じたのだった。
どんなジャンルでもそうかもしれない。TRPGでも、ボードゲームでも、様々などんなことでも、「これだけすごいものがあるから、偉い。尊敬するべき」ということは、ある程度のリスペクトはあっても良いとは思うものの、過剰になってしまえば、それもまた毒なのだろう。
我々は日本でLARPゲームを「広めたい」。だからこそ、そういった考え方にも配慮していきたい。そう思うのである。
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