第415話 されたことは忘れない
一夜明けた。
下邳の城を征した曹操は、主閣
「いざ、降人を見よう。」
軍事裁判の法廷が開かれた。
まず第一に、本戦の首謀者である呂布が引き立てられてきた。
巨大な
「座れ。」
眉一つ動かさぬ、曹操の冷静で冷酷な一言により、呂布は白門楼下の冷たい石畳の上に膝をつかされた。
膝をつき、彼が見上げると、
「ここまで辱める必要はなかろう? 縄を少し緩めるよう命じてくれ。」
と言った。
曹操は英傑を愛する人物である。
人柄に問題があろうとも、呂布は紛れもなく英傑の一人であった。
「虎に人情は不要。―――しかし、英傑を辱めるのも私の主義に反する。少しばかり縄を緩めてやれ。」
と、曹操が苦笑して呂布の側にいる
「丞相。虎は縛られて絵となります。縄を緩めると絵から虎が飛び出し、鑑賞者に害を加えましょう。滅多に
この言に呂布はキッ!と彼を睨みつけ、
「この酔っ払い猿め!要らざる口を挟むな!!」
といって、牙をむいて噛みつきそうな顔をした。
(あれが我が主であった男の今の姿か・・・)
階下にて、吠える狂狼の姿を見て、悲しそうに、そして寂しそうな眼で彼を見つめる三人の将がいた。
侯成、魏続、宋憲の三名である。
やがて、呂布は彼らの存在に気付いた。
昨日まで自分の下についていた者たちが、敵の下について並んでいる。
呂布は面を怒りの色に染めて叫んだ。
「貴様らッ!どの
彼の叫びに三人は一笑した。
「その言葉は、日頃、将軍が愛されていた女たちに仰ったら良いでしょう。」
「我々には恩ではなく怨を。」
「百杖の罰や過酷な禁制は与えられても、女子ほどの恩を受けた覚えはありませぬ。」
言い返された言葉は真である。
日頃の行いは大事。
返せぬ言葉に呂布は口を閉じ、黙々と
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