第394話 掎角の計

 呂布にほとほと愛想が尽きた陳宮であったが、呂布はかりそめにも主君である。

 その主君から頭を下げられ機嫌を取られると、彼はまた、


「しょ、しょうがありませんな。そこまで謝られるならば、策を考えぬわけにはいきますまい。」


 と、粉骨砕身ふんこつさいしんして彼のために策を考え始めた。


「ポクポクポクポク・・・・・・・・チーン!ひらめいた!!」


 良計を思いついた陳宮は、早速、呂布に献策した。


「呂布将軍。曹操軍に打撃を与える『掎角きかくけい』という策を思いつきました。」


「掎角の計?・・・どのような策か?」


「鹿を捕らえるように軍を動かす作戦でございます。は後ろからあしをとること、かくは前からつのをとることを意味します。」


「ふむふむ、掎が後方攻め、角が前方攻めを意味すると。・・・で、具体的にはどうするのだ?」


「まず、将軍が城から打って出ます。そうすれば、曹操は必ず将軍に兵を差し向けるでしょう。そしてそのとき、私は城より兵を繰り出し、曹操軍の背後を叩きます。」


 呂布軍 ← 曹操軍 ← 城兵

 (城兵が曹操軍の背後を叩く。)


「曹操が城へ兵を向ければ、今度は将軍が曹操軍の背後を叩きます。」


 呂布軍 → 曹操軍 → 城兵

 (呂布軍が曹操軍の背後を叩く。)


「このように、敵の前後に兵を構え、前後が呼応して敵に当たるように戦う。これが私の考えた『掎角の計』の全容となります。」


 鹿を捕らえるように前後から敵を叩く掎角の計。


 この計を聞いた呂布は大いに感心し、陳宮を褒め称えた。


「ふむふむ、なるほど、良計良計。孫子も裸足で逃げ出すほどの見事な計略だ。―――よし!ただちにその作戦を行うぞ!準備開始だ!!」


 彼はすぐに諸将に下知を飛ばし、城の命運を賭けた『掎角の計』で曹操軍と戦うことにしたのであった。

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