第383話 味方同士で争わない

 曹操軍を砦内へと引き入れた陳登は第二の合図をあげた。

 それは楼上から打ち上げられた狼煙であり、シュルシュルと火鼠ひねずみのような光が夜空を走った。

 その合図は、今度は曹操軍ではなく、この蕭関に向かい来る呂布軍に対して上げたモノである。


「むっ!? 陳登からの合図だ!皆の者!裏切り者を成敗するぞ!!」


 彼方より合図を見た呂布は将兵に号令を下し、一斉に蕭関へと駆けて行った。


 揉みに揉んで、急いで道を駆けて行くと、蕭関の方より、此方に向かい駆けてくる大部隊が闇夜に見えた。


「ややっ!? 前方に兵の影が見える!・・・曹操軍に違いない!一気に蹴散らすぞ!!」


 呂布は迷いなく、前方に見えた大部隊を曹操軍と判断して攻撃を仕掛けた。

 すると、その大部隊も呂布軍を敵軍と判断したのか、彼らも呂布軍に攻撃を仕掛けた。


 両大軍は大激突。


 暗闇の中にて、両軍は喊声を上げながら剣を振るい、互いの体を傷つけあった。

 紅くなった兵は倒れ、無数の死骸が大地に散々と散らばり始める。


 本気の殺し合いを続けていると、呂布の目に、とあるモノが映った。


(あれは・・・我が徐州軍の旗ではないか?)


 敵兵が掲げている旗に『徐』の一文字が描かれているのに彼は気がついた。


「・・・まさか!!」


 察した呂布は、大地に響く怒鳴り声を上げた。


ほこを引け!敵ではない!味方だ!同士討ちだッ!」


 敵だと思っていた大部隊は、徐州の危機を救うべく、蕭関の砦より出て来た陳宮の部隊であった。

 彼の大声と同時に、大部隊の方でも、


「皆!静まれ!相手は味方だ!曹操軍ではないぞ!これ以上争うな!!」


 と、陳宮がしきりに騒いでいた。


「えっ!? 味方なの!うそぉ!!」


「はっ? ちょっ? えぇ・・・。」


「何か・・・もう・・・剣で刺してゴメンね☆ (ゝω・) テヘペロ」


 両将の声で互いの正体に気付き、ようやく戦乱は収まったものの、その損害は大きかった。


 兵たちの多くは傷つき、死者の数もおびただしい。


 互いに意味無き戦をしたことに呆れ果てながら、呂布と陳宮は状況整理を始めたのであった。

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