第343話 挨拶の時は手土産を

 乱世を生きている英雄たちのメンタルは尋常ではない。


『自分の命令一つで大勢の人間の生死が決まる。』


 その重圧に耐え続けなければならない彼らのメンタルはハッキリ言って異常である。(グリフィス談)


 その中でも、とりわけ、曹操のメンタルの強さは群を抜いていた。


『勝っては大敗、勝っては完敗、勝っては惨敗の繰り返し。』


 そんな覇道を進んで心が折れない彼のメンタルの強さは乱世一であったのは間違いないだろう。


 鋼の精神を持つ曹操だが、近頃、そのメンタルがさらに強固なモノになって来ていた。


 それは、彼が最も警戒している人物である『劉備』を味方につけたからに他ならない。


 呂布によって小沛を追われた劉備に恩を売り、彼を味方に付けたことは、曹操の心にゆとりを持たせていた。


『優秀な人間を家族よりも愛す。』


 劉備、関羽、張飛を手中に収めた曹操は彼らを大層にもてなし、彼らとの絆を深めながら、自身の傷心を癒しながら、袁術、張繍といった邪魔者を消し去らんと日々画策していたのであった。


 そんな日々が続いたある日のこと、彼の元に孫策からの使者が参上してきたのが前話までの流れである。



 ―――――曹操は許都を立つに先立ち、予州の劉備と徐州の呂布に参戦の誘文を発していた。


『今から淮南へと向かう・・・みんな!私について来い!!』


 この檄により、劉備は関羽、張飛と言った猛将を連れて予州の境へ、呂布もまた徐州の境へと一軍を連れて参った。



 曹操はまず、劉備と面会をした。


「劉備殿、お久。」


「お久、お久、お久しぶりです、曹操様。」


 曹操は上から目線、劉備は下から目線で挨拶を交わした。


「――――曹操様。手土産がございます。」


 そう言って劉備は指パッチンをして、袋に包んだ二つのモノを部下に持ってこさせた。


「コレは・・・一体何か?」


 曹操が不審の目を持って劉備に尋ねると、彼は無言のままに包みを開いた。


 その中身は何と・・・・・・韓暹と楊奉の首でした!オーマイガー!!


「何とッ!この二つの首は、先頃、袁術を裏切って呂布も下についた韓暹と楊奉だというのか!!」


 説明口調の曹操が眼をみはって問いかけると、劉備は答えて、


「そうです。・・・この者たちはその後、琅邪ろうや沂都ぎとの両県に来て史庁に臨んでいたのですが、たちまち苛税かぜいを課し、領民を苦しめ、悪代官のまねごとをリアルにやり始めました。」


「その噂を耳にしました私が、史道を正す意味で、関羽と張飛に命じ、両名を酒宴に招いてピョンとさせました。」


 答えを聞いた曹操は大変に喜び、


「良しッ! 良し!良し!良し!良し!非常にディ・モールト良しッ!」


「貴殿の言動、天晴至極!」


「私は誠に良い友を得たモノだ!!」


 と、大いに劉備を褒めたたえ、機嫌を最高潮ハイ・ヴォルテージにして、次なる呂布との会談に臨むのであった。

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