第292話 時代の流れに逆らわない
孫策軍の勢いは止まらなかった。
戦いは連勝に継ぐ連勝。
圧倒的な力で敵を叩きのめし、彼の軍勢は文字通り敵なしであった。
また、彼は油断なかった。
戦い取った地には、すぐに治安を布き、民心を得ることを第一とした。
法を正して貧民を救い、産業の発展に力を入れながら、悪人には厳罰を与えた。
『孫策来る!!』
この言葉を聞くだけで、良民は道を開けてひれ伏し、悪人は逃げ散らかした。
今や孫策は、時の人である。
士官を願い出る者は後を絶たず、そんな彼らを軍へと迎え入れ、平和の復興へと進めさせたのであった。
――――こうして、江東は孫策の手により平定された。
平定を為し遂げた彼は、老母と一族を片田舎から
そして、彼は弟の
その頃、呉郡の
彼は孫策がこの地に来ると知るや否や、すぐに戦闘準備を始めた。
「孫策如き若僧!恐れるに足らず!返り討ちにして地獄の断頭台に送ってやる!!」
準備を終えた厳白虎は、意気揚々と孫策軍に戦いを挑んだ。・・・が、見事に敗れた。
それはもう、惨敗も惨敗。完敗ちゃ~~ん!であった。
彼の弟は討死に、頼れる将も討死に、兵将問わず討死に討死に討死に!!
この事態に慌てた厳白虎は、烏城を捨て、
――――追手を振り切って、厳白虎は命辛々、会稽の地へと到着した。
王郎は友人の厳白虎を迎え入れようとした。
すると、臣下の一人である
「時が来ました。時に逆らう行動は身を滅ぼします。この戦は避けるべきでしょう。」
と、
この忠告に王郎は驚き、彼に問いただした。
「時とは何じゃ?」
「新しい時代の波です。厳白虎を捕らえ、孫策に献上し、彼と誼を結ぶのです。・・・それが時代の流れに沿うというモノです。」
「馬鹿を申せ!孫策如きに跪くなど恥も恥!!会稽の王郎ともあろうものが見っとも無い媚を見せられるものか!!」
「・・・殿。孫策は善政を布き、民心を集め、その勢いは日の出の如く活気づいております。それにひきかえ、厳白虎は悪政を布き、民心を放ち、その勢いは日の没する如く不活であります。そんな彼に手を差し伸べ、時代に滅ぼされるべきではございません。・・・新たな時代と手を結ぶべきなのです。」
「いや、厳白虎もわしも滅びはせん!逆に孫策など滅ぼしてくれん!新たな時代など来るはずないのだ!」
聞く耳持たない主に呆れながら虞翻は呟いた。
「・・・古い人間だ。あなたは次の時代に必要ない人間でしょう。」
虞翻の言葉に王郎は激怒した。
「無礼な!貴様などクビだ!クビクビ!もう二度とわしの前に姿を見せるな!!」
彼の戦力外通告に虞翻は笑って、「こちらから願い出る手間が省けました。」と、すんなりそれを受け入れ、国外へと去って行ったのであった。
トップに立つ者に必要な能力は『危機管理能力』である。
時代の流れを読み誤った王郎と厳白虎の未来を詳細に語る必要はないであろう。
―――こうして江南、江東の八十一州は、今や時代の人、孫策の治めるところとなった。
兵は強く、土地は肥え、文化は栄えた。
孫策は諸将に各地の要害を守らせ、広く賢才を集め、善政を布いた。
『小覇王孫策』
その地位は確固たるものとなったのであった。
第十一章 完
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