第290話 全てをダメとは思わない
孫策と太史慈は、今、帷幕で談笑している。
「――――ところで、一つ君に聞きたいことがあったのだが・・・先頃の神亭での一騎打ちは、あのまま続けていたら、君はこの孫策に勝っていたと思うか?」
孫策が笑いながら尋ねると、
「いや、どうでしょうか。勝敗はわかりませんな。」
と、太史慈もまた笑って答えを返した。
「もし俺が負けていたら、君は俺を助けたかな?」
「いえ、それはありません。首を刎ねていたでしょう。」
「正直だな。」
「ふっ・・・もし、私が助ける気を起こしたとしても劉繇があなたを殺すに違いありませぬ。」
「もっともであるな。」
「「はははははは!!」」
二人はそろって
―――――宴もたけなわになったその時、太史慈は孫策に、とある提案を申し出た。
「一つ提案があるのですが、申してもよろしいでしょうか?」
「提案とな。・・・よかろう。一体何であるかな?」
「劉繇に付き従っていた将兵は、その後、主を失って四散流浪しております。」
「つまり・・・敗残兵の事か?」
「左様です。敗残兵という言葉を用いなかったのは、彼らの中に優秀な将兵たちが織り交ざっているからです。・・・敗残兵というのは『無能の群れ』と思われがちですので。」
「うむ。・・・して、俺にどうしろと言うのだ?」
「はい。・・・で、今、この太史慈を三日ほど
「ほほう・・・ようするに、『残軍の中より三千の将兵を抽出して、この孫策に忠誠を誓わせる』。そういうことか?」
「YES。」
この太史慈の提案に、孫策は疑う心を知らずに喜びの笑みを浮かべた。
「面白い!やってみたまえ!期限はお主の申した『三日』とする!時刻は『午(うま)の刻(=正午)』!それまでに帰ってこなければ、それ相応の罰をお主に与える!よいか!!」
「はっ!無問題であります!」
「よし!では日が昇ると共に行ってこい!!」
「はいはい!ハイヨー!シルバー!!」
孫策からの承認を得た太史慈は、朝日と共に馬に跨り、一人、孫策の陣営から出て行ったのであった。
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