第269話 困った時は動けない

 張飛が劉備の元に謝罪に来てから数日が経過した。

 その間、両軍の間には大きな戦いは無く、こう着状態が続いていた。

 劉備軍は張飛の失態のための善後策を講じるために動けずにいたのだが、袁紹軍は何故動かなかったのだろうか?

 その理由は、彼らが外交的に働いていたからである。


 袁術は劉備軍が手ごわいと見るや、外部の人間に協力を仰ぎ、劉備軍を自軍と協力軍の二軍にて叩こうとしていた。

 そして、その協力相手なのだが・・・それは徐州を制圧した呂布であった。



「――――なに?南陽の袁術から協力要請だと?」


「はい。今しがた袁術より使者が来まして、この手紙を殿に渡してくれと・・・。」


「ふむ。・・・では、どれどれ。読み読み。」


 呂布は周囲にいた家臣たちに聞こえるように、袁術からの手紙を読み上げた。



朕が君に願い申す。

劉備軍の背後を攻めて欲しい。

奴らの背後を攻めて、我が南陽軍を勝利に導いてくれれば、以下のモノを贈呈しよう。

・食糧五万石

・駿馬五百匹

・金銀一万両

・緞子千匹

これ以上は無い報奨であろう?

君の良い返事を待っておる。

ではでは、バハハーーイ!



 手紙を読み上げた呂布は、腹心の陳宮の方へと体を向けた。


「陳宮よ。お前はどう思う?」


「もちろん応じるべきでしょう。これはラッキーチャンスです。良い条件に良い案件。今のうちに危険分子の劉備を叩いておくのが得策です。」


「うむ。俺も同じ考えだ。・・・よし!では、使者殿に会い、協力の意を伝えるとしよう!!」


 呂布は喜んで袁術との密命に応じることにしたのであった。

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