第229話 思い立ったが吉日である

 李傕と郭汜の2人は悪徳将軍である。

 しかし、彼らの家臣たち全てが悪徳であるとは限らない。

 李傕の家臣である『賈詡かく』、『楊奉ようほう』、『宋果そうか』の三名は、悪行を行う彼のことを心底軽蔑していた。

 賈詡は兵たちに世間の悪評を言いふらし、内部より切り崩しを行った。

 楊奉と宋果の二名は過激派で、兵を率いて李傕暗殺を決行しようとした。

 しかし、その計画を事前に知った李傕により、彼らは見事に返り討ちにあい、宋果は捕らえられて斬首の刑に処され、楊奉は命からがら何処かへと逃げのびて行った。

 李傕は凱歌をあげたが、その戦果は真逆である。

 一勢力を失った彼の戦力は衰退した。

 味方が反乱して、それを叩きのめしたのだから当然のことである。


 一方、郭汜軍も、戦争長期化問題が発生していた。

 五十余日も戦い続ければ当然のことだが、軍内部より不平不満がささやかれ始めていた。


「もう戦いたくなか~~!仕事多いし、禄は少ないし、休みもない!!ブラック企業反対!!!」


 日月火水木金土と休みなく働き続ける兵隊たちの体力は限界であった。

 両軍ともに集中力はなくなり、注意力が散漫になっていった。

 そんな中、グダグダな戦いを続け、さらに疲労を蓄積する彼らを見て喜ぶ一団がいた。


「帝、これはチャンスですぞ。李傕の監視の目を盗み、この城より抜け出すのです。」


 その一団は、献帝一派であった。

 李傕は自軍と郭汜軍の相手で手一杯となっており、帝への監視の目がゆるくなっていた。

 彼らはそこに目を付けたのである。


「確かに今が好機の時であると見るが・・・どうやって城を抜け出すのだ?」


「李傕は表の郭汜軍に気を取られており、城の裏側にまで気が回っておりません。そのため、城の裏門の警備は手薄になっております。その門より城を抜け出すのです。」


「・・・よし、ではすぐに手を打て。」


「御意!!」


 帝の決断は素早かった。


 『思い立ったが吉日。』


 その日以降を凶日にしないようにと、献帝一派はすぐに準備を開始したのであった。

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