第201話 気合があれば何でもできる

「呂布は、私自らが倒す!!」


 曹操は、気合十分、大軍を引っ提げて国元へと帰還した。


 曹操は逆境に燃えるタイプであった。

 追込まれれば追い込まれるほどに気持ちが昂るタイプ。

 そんな彼は後に、こんな言葉を残している。


『私は、いかなる逆境も、好機に変える努力をした!』


 難局に立たされた曹操の本領が、今、発揮されようとしていた。



 兗州へ戻った曹操は、軍を二つに分けた。

 一つは曹仁そうじんを大将として兗州を囲ませ、自身は濮陽ぼくよう方面へと進行した。

 これはもちろん、冒頭で述べたセリフの通り、自らの手で呂布を倒すためである。


 濮陽に迫ると、曹操は軍を停止させた。


「全員止まれ!1、2、3!!」


 訓練された兵たちは、曹操の言葉に合わせてダッダッダッ!とリズムよく足踏みをして、その場で歩みを止めた。


 軍を止めたのは兵たちを休ませるためでもあったが、その他にもう一つ理由があった。

 それは、先頃の軍議の中で述べられた、曹仁の言葉を思い返したからである。


「曹操様。呂布の武勇に関しては、私の口から特に言う必要はないでしょう。・・・しかし、奴の武勇以外に警戒すべき点が一つあります。」


「それは、奴の配下にあります。」


「近頃、彼の側には例の陳宮の他に『張遼ちょうりょう』という名の猛将が手下に加わっておるそうです。」


「その者の他にも有能な士が呂布の元に集いつつあるとのことですので、よくよくお気を付け下さいませ。」


 信頼できる家臣の言葉を思い出し、沈みゆく夕日を眺める曹操。

 しかし、曹操はこの言葉に特に恐れを抱かなかった。


(呂布の元にいかに優秀な士があつまろうと、所詮はアホの呂布。奴の知恵袋であろう陳宮も底の知れた素浪人。・・・恐れるに足らず!!)


 自分の領土を攻めた呂布と、かつて自分を裏切った陳宮。


 二人の卑怯者に目にもの見せてやろうと、曹操は意気込むばかりであった。

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