第188話 山の天気は変わりやすい

「気~に入らない♪いらないない♪」


「だ~れが好んでジジイの護衛♪」


「タ~ダ働きもいいところ♪」


 張闓を筆頭に曹嵩の護衛をしている兵たちは、皆、不満顔であった。


 『自分たちは社畜生活、片やジジイは王様生活』


 王様気分の曹嵩を護衛をすることで突き付けられた現実。

 護衛兵たちは、皆、ブーブーと文句を垂れて護衛の任をこなしていた。



 曹嵩一行が華費かひという山中まで来ると、急に天気が悪くなってきた。

 陽々と射していた日の光は暗雲にさえぎられ、辺り一面が暗闇に覆われた。

 そして、青白い電光がピカッと光り、けたたましい轟音が周囲に木霊こだました。

 それで終われば無問題であったのだが、そうは問屋が卸さない。

 ポツ、ポツポツとにわかに雨が落ちてきた。

 その雨は『やや強い雨』、『強い雨』、『激しい雨』、『非常に激しい雨』へと段階を変えていき、やがて最終形態ファイナルフォームである『猛烈な雨』へと変態した。


「いかん!いかん!こりゃいかんばい!!どこか雨宿りできる場所はないか!!」


「張闓隊長!あそこに寺があります!山寺の門へと避難しましょう!!」


「よっしゃ!ご都合主義バンザーイ!皆、あそこへ逃げ込め!!」


「「あびゃびゃびゃびゃ~~~!!」」


 1時間に80ミリ以上の雨で息苦しくなるような圧迫感のある『猛烈な雨』に打たれながら、曹嵩一行は山門の陰へと隠れこんだ。


 ザーザーと滝のような音を鳴らし、止むことのない雨。


 その内に日が暮れてしまい、彼らは旅を進めるどころではなくなってしまった。


「う~む。これは参った、参った。白旗降伏ですわ。」


 天を見上げて、張闓はため息交じりに呟いた。

 そして、彼は部下たちに下知を飛ばした。


「今宵はこの寺に泊まることにする。本堂を貸してくれと、誰か寺僧じそうと掛合ってこい。」


「・・・」


「おい!貴様ら!聞こえんのか!寺へ行って、寺僧と掛合ってこい!命令だぞ!!」


「・・・」


 張闓はどうやら部下に慕われていないようで、兵たちは、皆、何か不平に満ちた顔をしていた。

 そんな彼らの露骨な態度に張闓はキレた。


「貴様らいいかげんにしろ!俺の言うことが聞けんのか!〇×△□・・・!!!」


「あ~もう五月蠅いな!はいはい!行きますよ!行けばいいんでしょう!!」


 ギャーギャーとせからしい(=やかましい)張闓の言動に、彼の部下たちは「やむなし」と、渋々と寺へと向かったのであった。

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