第180話 事後処理は大変である

 呂布は、いの一番に郿塢城に乗り込んだ。

 後宮に取り残された美女たちの叫び声など気にも止めず、彼はひたすらに奥へと走った。

 そして・・・


「貂蝉!!」


「呂布将軍!!」


 後宮の奥の一室で呂布と貂蝉は抱き合った。

 今度は許されざる抱擁ではない。許され得る抱擁である。

 2人の抱擁を止めることは誰も許されない。

 その権利を呂布は勝ち取ったのだ。自分の恩人を犠牲にして・・・。


「貂蝉!喜べ!董卓は死んだ!俺が殺したのだ!これでお前は俺のモノだ!!」


 呂布は声高々に董卓を殺したことを貂蝉に告げた。

 その発言を受け、彼女は涙ながらに感謝の言葉を述べた。


「よかった・・・。董卓太師は死んだのですね。これで私の想いは報われました。・・・将軍。ありがとうございました。」


 この言葉を聞いて、呂布は彼女をさらにギュッと抱きしめた。

 そして、これから此処で起こるであろう惨劇に彼女が巻き込まれぬよう、彼女を抱えて郿塢城を後にした。



 郿塢城には金銀財宝、美女八百人、二十年分の兵糧が貯えられている。

 一言でいえば郿塢城は『お宝の山』である。

 そのお宝の山を、盗賊まがいの李粛と皇甫嵩の兵たちが見逃すはずが無かった。


「うひゃっほーーーい!財宝!財宝!ザックザク!全部俺たちのもんだ!!」


「ここにいる女は全部俺たちが頂く!!セクハラばんざーい!!!」


「腹八分? 否! 腹十分じゃーーーい!!食って食って食いまくれ!!!」


 彼らは郿塢城にあるモノ全てを略奪し始めた。

 兵たちの略奪により郿塢城は瞬く間に阿鼻叫喚の世界と化した。


 金の音は鳴り響き、美女の叫びは木霊こだまして、逆らう者は血の海に沈んだ。


 地獄絵図のような有様の城内にて、更なる惨劇が繰り広げられようとしていた。


「董卓一族皆殺し!やってお終い!お終いまい!!」


 略奪する兵たちを止めもせず、皇甫嵩は董卓の一族をひっ捕らえ、老若男女問わず、全ての者を斬首刑に処した。


 その数、実に千五百余名。


 これを半日の間にやってのけたと言うので、ドン引きもいい所である。


 董卓一族を皆殺しにした董卓暗殺チームは次に金蔵を開かせた。

 その中に蓄えられた財宝は凄まじいモノであった。


 黄金二十三万斤。

 白銀八十九万斤。

 その他諸々の財宝の数々。


 それらの財宝は全て、王允の指示のもと、長安への都へと移された。

 また、米蔵に蓄えられていた食料の内、半分は百姓たちに施され、もう半分は長安の米蔵に納められた。


 ちなみにその食料の額は八百万石というこれまた凄まじい量であったといわれている。

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