第176話 吉兆は貴重である
郿塢城の門前にて。
董卓は貂蝉を呼び寄せ、彼女に自分が帝になることを話していた。
「貂蝉!よろこべ!わしは皇帝の座に就くことになった!これでそなたは
「まぁ!本当ですか!それは・・・嬉しい!!」
董卓の話を聞いて、貂蝉は瞳を輝かせて返答した。
そんな彼女の
「ぬははははは!喜んでくれて嬉しいぞ、貂蝉よ!今から宮中に赴き、帝の位に就いて来る!そなたはここでわしの帰りを待つが良い!!」
「は~い!行ってらっしゃいまし~~~!!」
貂蝉はもう二度とここへは戻ってこないであろうことを察しつつ、郿塢城の門前にて董卓の出立を見送ったのであった。
董卓は数千の兵に守られて郿塢城を出立した。
その行列は目が眩むほど豪勢であり、数千の槍が放つ光は道行く者たち全てを威圧した。
(我が道に遮るモノは何もなし!)
一点の曇りも見当たらぬ栄光の道を突き進んでいる現状に、董卓は大満足していた。
ところが・・・
「うわっ!?」
董卓は思わず声を上げた。
董卓の乗っている馬車の車軸が折れたのだ。
グラリと大きく揺さぶられ、彼は酷く狼狽した。
「ぬぬぬ・・・!折角良い気分に浸っておったというのに・・・!沿道の百姓どもが道の整備を怠っていたからじゃ!!見せしめに村長の首をちょん切れ!!!」
兵たちに命令を下した後、彼は怒りながら馬車を降り、新たな馬車へと乗り換えた。
「まったく・・・気分を害するわ・・・。」
董卓が不機嫌にブツブツと呟いていると今度は霧がかかってきた。
「なんじゃ!なんじゃ!今度は霧か!しかも風が強くなってきた!!一体どうなっとるんじゃ!!!」
馬車は壊れて、天気も悪い。
悪いことが2度続き、彼はまたしてもワーキャー!と叫び始めた。
そんな彼をなだめるべく、偽の勅使を演じた李粛が言葉を発する。
「太師、落ち着いて下さい。これは吉兆です。ご安心めされい。(慌てろ慌てろ!ビビれビビれ!!)」
「吉兆だと?何を根拠にそんなことを抜かす!!」
「太師、アレをご覧下され。(さっさと見やがれ!このボケナスが!!)」
そう言って李粛は太陽を指さした。
彼が指さした太陽には、霧の影響により虹色の
その美しい環を見た董卓は心を落ち着かせた。
「なるほど。確かにお主の言う通り、これは吉兆の知らせであるな。」
「左様です。それに先ほどの馬車の件ですが、あれは旧きを捨て、新しき時代に変わる吉兆の知らせにございます。(逆だよ!逆!あれは凶兆の知らせだよ!マヌケが!!)」
「うむ。明らかな解釈だ。」
頭脳明晰な李粛の解釈を聞いた董卓は大きく頷き納得した。
しかし、それと同時に警戒もした。
(吉兆の知らせとはいえ、どうも悪い知らせ方であるな。・・・用心せねば。)
『二度あることは三度ある』
その諺を思い出した董卓は、護衛兵たちに周囲の警戒を強めるよう指示を出した。
それを見た李粛は、
「さすが太師。吉兆も警戒するとは、相変わらず抜け目のない人ですな。(無駄無駄!どう警戒してもテメェは死ぬんだよ!せいぜい悪あがきでもするんだな!!)」
とクスクスと笑い、場の緊張感を緩めた。
そうこうしている内に、一行は長安の城外へとたどり着いた。
「やっと着いたな・・・むっ!? あの一群は何だ!!」
城門へと近づこうとした董卓は声を荒げて叫んだ。
城門の近くに無数の人影が見えたのだ。
緊張が走る中、その一群から一騎が飛び出し、董卓の元へと近づいてきた。
「太師。私です。呂布です。太師をお迎えに上がりました。」
一群より近づいてきた者は呂布であった。
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