第164話 人は持ちつ持たれつの関係である
董卓より丞相府から追い出されて以降、呂布の機嫌はすこぶる悪かった。
酒を煽り、人を罵り、全ての物事に対してやけくそになっていた。
また、彼は終日1人で部屋に籠り、口をきかない日もあった。
それだけではない。
本来、丞相府に出仕する必要のある彼であったが、休んだり遅刻したりするなど散々な仕事っぷりを発揮していた。
そんな彼を取り囲む全ての人たちは彼の行動に眉をひそめると共に彼の事を心配していた。
「しょ、将軍・・・どうかなさいましたか?近頃・・・その・・・ご機嫌斜めの様ですので、皆、将軍の事を心配しております。」
「黙れっ!お前たちに何が分かる!俺の・・・俺の気持ちが分かってたまるか!俺は太師のために、血と汗と涙を流して諸国に睨みをきかせているのだぞ!!それを・・・それを・・・それを、あの御方は!!・・・ど畜生がぁぁぁぁぁぁ!!!」
やり場のない怒りに吠える狂狼。
目に涙を浮かべ、屋敷を独りうろつく彼の姿は、天下一の豪傑とは思えぬほど惨めな姿であった。
そうこうしているうちに一月余りが経過した。
庭には緑の草木が生え広がり、陽の暑さも加わって初夏の様相を呈していた。
しかし、呂布の生活は相変わらず荒れていた。
強さを増す陽の日差しとは裏腹に、どす黒い影が彼の心を徐々に覆い尽くそうとしていた。
そんなある日、彼の元に一報が届いた。
「将軍・・・悪い知らせです。董卓太師が病気になられたそうです。」
「・・・ふっ。あんな自堕落な生活をしていれば病気にもなろうよ。自業自得だ。」
家来からの報告通り、董卓は病気になっていた。
董卓の病気は命に関わるほどの重病というわけではないのだが、病気には違いないため、董卓の家臣たちは見舞いのために丞相府へと出仕しなければならなかった。
そのため今回の報は、「よろしいこと!董卓の元に見舞いに来なさい!わかったわね!!」という事を暗に示す報であったのだ。
「・・・将軍。私の・・・いえ、私たちの言いたいことはわかっていると思います。・・・どうかお願い致します。」
呂布の家来たちは彼の前で膝をつき、彼に出仕するように懇願した。
『董卓あっての呂布であり、呂布あってこその董卓である。』
呂布の家来たちはそのことを重々と認識しており、2人の関係が崩れるのを恐れていたのであった。
懇願する家来たちの姿を見た呂布は、「やむ得ない。」と彼らの願いを受理して、丞相府へと出向いたのであった。
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