第152話 魔女と野獣
数日後。
王允は様々な宝石を施した黄金の冠を使者に持たせ、贈り物として呂布の屋敷に届けさせた。
「おお!これは何と素晴らしい冠だ!!」
贈り物の冠をマジマジと眺めながら呂布は呟く。
「王允の家には昔から多くの宝物が伝わっていると聞いていたが・・・長安へと遷都した後にも、まだこんな名品があったのか。」
「これは礼を言わぬと失礼というもの・・・彼の家に行くとしよう。」
単純な男である呂布は赤兎馬に乗って、王允のいる屋敷に向かった。
「王允殿はおられるか!おらぁ!!」
屋敷の着いた呂布は、門番に王允がいるかどうかの確認を取った。
門番は慌てて屋敷の中へと入り、王允に呂布がやって来たことを伝えた。
「お、王允様!呂布がやってきました!!」
「おお!来たか!皆の者、呂布のアホを失礼の無いようにもてなすのだぞ!!」
「「了解でござんす~!!」」
王允は呂布が自分の屋敷に答礼に来ると察していたので、彼を歓迎する準備をしていたのであった。
王允は呂布の待つ門へと足を運ぶと、彼にわざとらしい挨拶をした。
「ややっ!これは呂布将軍!わざわざ私の屋敷に来るとは一体何用ですかな?」
「おう、王允殿。貴殿からの贈り物の礼をしに来たのだ。あれほどの宝物を頂いたのだから礼をせぬのは失礼というものだ。」
「わざわざそのような事で来て下さるとは・・・この王允、感激にございます。」
王允はへりにへりくだり、呂布を客間へと案内して、彼の機嫌を損ねないように一家を挙げてもてなした。
客間にて。
呂布は美酒が注がれた杯を掲げて、王允に問いかけた。
「王允殿。もてなし感謝いたす。・・・しかし、自分は董卓将軍の一家臣に過ぎぬ身分。貴殿は朝廷の大臣で名家の者である。それが何故自分にこのような丁重なもてなしをして下さるのか?」
呂布の問いに王允は酒をすすめながら答える。
「私は常日頃より将軍の武勇にぞっこん(=心底惚れている)なのです。将軍が我が家に来て下さり、赤兎馬を家の門に繋がれただけでも王允家の面目というモノです。」
それを聞いた呂布はさらに上機嫌となった。
彼の顔は喜びのあまり乱れており、だらしのない表情になっていた。
そんな彼の表情を見て、「ここが好機!」と王允は呂布に接客している侍女たちに指示を下した。
「これ、お前たち。娘の貂蝉をここに呼んできてくれ。将軍に娘の舞をお見せしたい。」
「かしこまりました。では・・・。」
侍女の1人は頭を下げると、部屋を出て貂蝉を呼びに行った。
貂蝉が来る間に他の侍女たちは楽器を準備した。
「王允殿には娘さんがおられるのか?」
「ええ。娘は人見知り故、あまり人様の前に姿を見せませぬが、せっかく将軍が来られたのですから将軍に会わせてあげようと思いましてな。・・・よろしいですかな?」
「うむ。俺も王允殿の娘を一目見てみたい。」
「ありがとうございます。それと娘は舞が得意でしてな。是非ご堪能下され。」
「ほう。それは楽しみだ。期待させてもらおう。」
呂布と王允が話をしていると、侍女の1人が室内と外部との境に垂らしてある
呂布は「王允の娘さんかな?」と帳が上がった方を見つめた。
瞬間呂布は息をのんだ。
部屋に入って来た女性は花も恥じらう超絶美人『貂蝉』であった。
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